「優ー歌っっ」
「栞衣奈……っ」
教室で、栞衣奈に会うなり昨日のことを話した。
「ウソっ、逃げ出してきたってこと!?」
「うん……助けてもらったからよかった、けど……」
栞衣奈は深刻な表情(かお)をして、私を見た。
「ヤバいと思うよ?だって、また襲われるかもしれないじゃん」
「でも今日は帰り部活あるし、遅くなっちゃうから栞衣奈を待たせることはできないよ。お母さんは、夜勤だしさ」
いつも栞衣奈と帰るが、栞衣奈は何も部活に入っていないから部活のある日は帰れない。
私の家の方向に家がある人は少なく。
どうしても、一人になる。
「お父さんも遅いんだっけ」
「今日は九時に帰ってくるって」
「あたしのお母さんに頼もっか?」
栞衣奈の家は父親が、医者をやっている。
病院までやっているため、充分な収入が得られる。そのせいか、母親は働いていない。
家事に専念すればいいと、栞衣奈パパが言ったそうだ。
「ありがとう、栞衣奈。でもいいよ。何かあったら栞衣奈に連絡するから、安心して」
「……わかったわ。絶対よ?」
大きく頷いて微笑むと、やっと栞衣奈の顔から心配の表情が消えた。
「栞衣奈、お願いがあるんだけど」
「今日はダメ」
科学のノートを見せた途端、ため息をついて栞衣奈はあきれたように言う。
「音楽部に力を入れるのもいいけど、きちんと勉強なさい」
「はぁ~い」
栞衣奈に頼る癖、直さなければ。
そう思いつつも、いつも頼ってしまう自分が恥ずかしい。