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青々しい空に白い雲。
私はあるところに向かっていた。
「優歌、どこに行くの?せっかく会えたのに」
「栞衣奈、ごめんね。どうしても行きたい所があるの」
薄紅色のリップグロスを塗った唇が動く。
栞衣奈は、また今度ね、と言って去って行った。
「……よしっ」
再び歩き出す。
少し緊張しているけれど大丈夫。
──目的の場所に着いた。
桜の木が一本だけ、大きく存在感を放っていた。
「お久しぶりです、茉璃愛先輩」
桜の木に向かってそう言った。
ここは、瀬谷崎学園の中にある大きい桜の木の前。
この桜の木の前で、私は茉璃愛先輩に出会った。
中等部のころ、広い瀬谷崎学園で私は迷ったことがある。
桜の木の前で、茉璃愛先輩は座っていた。
『どうしたの?』
『あのッ……迷って……しまって』
『クスッ……広いものね。どこに行きたいの?』
そう言って連れて行ってくれた。
私と先輩の出会いの場所。
変わっていないな。
「もう、ずいぶん時が経ちました。私なんか、先輩より年上になりましたよ」
いたずらっぽさを含んだ笑みを浮かべて。
私は桜の木に右手を置きながら、続けた。
「でも、変わらないでくれましたよ。瀬谷崎学園も、この桜の木も」
大きな桜の木を見つめると、甘い桜の香りが鼻をつく。
「部活も、立派に引退しました。
文化祭で、茉璃愛先輩とのCDを売りました。これ以上ないくらい売れましたよ。
足りなくなりましたから……」
泣きそうな気持ちを抑える。
我慢しているせいか、体が震えてきている。
「二人で立つはずだったステージに、一人で立って……寂しかったけれど……しっかり伝えました。このCDに込めた思いと、茉璃愛先輩の事。
……そうしたら、お客さんが拍手してくれて……涙が出ちゃいました」
文化祭……あんなに良い文化祭になったのは先輩のおかげです。
そっと目を閉じる。
「律玖さんに、告白……したんですよ」


