歩き出そう、虹色に輝く未来(あす)へと。




◆◆◆◆◆


青々しい空に白い雲。
私はあるところに向かっていた。


「優歌、どこに行くの?せっかく会えたのに」
「栞衣奈、ごめんね。どうしても行きたい所があるの」

薄紅色のリップグロスを塗った唇が動く。
栞衣奈は、また今度ね、と言って去って行った。


「……よしっ」

再び歩き出す。
少し緊張しているけれど大丈夫。




──目的の場所に着いた。
桜の木が一本だけ、大きく存在感を放っていた。

「お久しぶりです、茉璃愛先輩」

桜の木に向かってそう言った。
ここは、瀬谷崎学園の中にある大きい桜の木の前。
この桜の木の前で、私は茉璃愛先輩に出会った。


中等部のころ、広い瀬谷崎学園で私は迷ったことがある。
桜の木の前で、茉璃愛先輩は座っていた。


『どうしたの?』
『あのッ……迷って……しまって』
『クスッ……広いものね。どこに行きたいの?』

そう言って連れて行ってくれた。

私と先輩の出会いの場所。
変わっていないな。

「もう、ずいぶん時が経ちました。私なんか、先輩より年上になりましたよ」

いたずらっぽさを含んだ笑みを浮かべて。
私は桜の木に右手を置きながら、続けた。

「でも、変わらないでくれましたよ。瀬谷崎学園も、この桜の木も」

大きな桜の木を見つめると、甘い桜の香りが鼻をつく。

「部活も、立派に引退しました。
文化祭で、茉璃愛先輩とのCDを売りました。これ以上ないくらい売れましたよ。
足りなくなりましたから……」

泣きそうな気持ちを抑える。
我慢しているせいか、体が震えてきている。


「二人で立つはずだったステージに、一人で立って……寂しかったけれど……しっかり伝えました。このCDに込めた思いと、茉璃愛先輩の事。

……そうしたら、お客さんが拍手してくれて……涙が出ちゃいました」

文化祭……あんなに良い文化祭になったのは先輩のおかげです。

そっと目を閉じる。


「律玖さんに、告白……したんですよ」