「そんなに泣かないで。
俺まで泣きたくなるから」
律玖さんは、茉璃愛先輩に振られたまま。
もうよりを戻すことはできない。
彼女はいなくなってしまったから。
そんな律玖さんが一番、泣きたいはずなのに。
「……はいっ」
できるだけ、元気良く返事をした。
「ん、よろしい」
よくできました、と頭を撫でてくる。
そっと目をそらし、私は頭を撫でられていた。
──夕日の赤い光が教室に差し込んで。
生徒たちは下校をし、静まり返った学校に一人残っていた。
「……先輩」
音楽室に入ると、そう呼んだ。
『優歌ちゃん、遅いよ~。もう終わっちゃった』
茉璃愛先輩はもう、そう言ってはくれない。
「茉璃愛先輩、ごめんなさい。
私……やっぱり、律玖さんのこと、好きです。先輩を苦しめておいて……許されないってわかっているけどっ……でも」
誰もいない音楽室にしゃべっていたら、変な人だと思われるだろう。
だけど、今は誰もいない。
想いを伝えるのを、邪魔なんかされたくないから。
「茉璃愛先輩の好きになった律玖さんではなく、一人の牧瀬律玖という人を、好きになりました。……それだけは、知っておいてください」
頭を下げると、風が吹いた。
窓が開いていて、歌が空から聞こえてくる。
『青い空の下 優しい君に出会った』
茉璃愛先輩の、美しい歌声。
「茉璃愛先輩……」
風がもう一度吹いて歌は聞こえなくなった。
ゆっくり、ゆっくり歩いて窓を閉める。
「まだいたのか。早く帰れよ」
先生に声をかけられ、軽く頭を下げた。
「ありがとうございます、先輩」
誰にも聞こえないような、消えそうな。
そんな声で呟いた。
俺まで泣きたくなるから」
律玖さんは、茉璃愛先輩に振られたまま。
もうよりを戻すことはできない。
彼女はいなくなってしまったから。
そんな律玖さんが一番、泣きたいはずなのに。
「……はいっ」
できるだけ、元気良く返事をした。
「ん、よろしい」
よくできました、と頭を撫でてくる。
そっと目をそらし、私は頭を撫でられていた。
──夕日の赤い光が教室に差し込んで。
生徒たちは下校をし、静まり返った学校に一人残っていた。
「……先輩」
音楽室に入ると、そう呼んだ。
『優歌ちゃん、遅いよ~。もう終わっちゃった』
茉璃愛先輩はもう、そう言ってはくれない。
「茉璃愛先輩、ごめんなさい。
私……やっぱり、律玖さんのこと、好きです。先輩を苦しめておいて……許されないってわかっているけどっ……でも」
誰もいない音楽室にしゃべっていたら、変な人だと思われるだろう。
だけど、今は誰もいない。
想いを伝えるのを、邪魔なんかされたくないから。
「茉璃愛先輩の好きになった律玖さんではなく、一人の牧瀬律玖という人を、好きになりました。……それだけは、知っておいてください」
頭を下げると、風が吹いた。
窓が開いていて、歌が空から聞こえてくる。
『青い空の下 優しい君に出会った』
茉璃愛先輩の、美しい歌声。
「茉璃愛先輩……」
風がもう一度吹いて歌は聞こえなくなった。
ゆっくり、ゆっくり歩いて窓を閉める。
「まだいたのか。早く帰れよ」
先生に声をかけられ、軽く頭を下げた。
「ありがとうございます、先輩」
誰にも聞こえないような、消えそうな。
そんな声で呟いた。


