次の日、部活のために朝早くから学校にいた。
私が所属しているのは音楽部と言って、ピアノを伴奏に歌うことをする。

ピアノ係の人は弾き語りをすることがあるが、たいていはピアノ係が伴奏を弾き、歌う人─ヴォーカル─がそれに合わせて歌うことが多い。
ヴォーカルでも、弾き語りをすることがあるが練習のときのみだ。

「おはようございます」

音楽室に入ると、まだ誰もいなかった。

「あ、まだ来ていないんだ」

鞄から、楽譜を取り出すと発声練習。
私はヴォーカルなのだ。

「アー♪」

高い声から低い声まで、しっかり出す。

「優歌ちゃん」
「茉璃愛先輩」

肩より少し長い軽いウェーブのかかった髪をなびかせて、部長でもある東峰茉璃愛(とうみね まりあ)先輩が入ってきた。

茉璃愛先輩は、とても優しくて成績もいいから評判がいい。そんな先輩とは仲良しで、よくペアを組んで練習する。
先輩はピアノの腕がピカイチなので、ペアを組むのは申し訳ない気がしてならないけれど。

「おはようございます」
「おはよう、早いね」

ピアノの前に座り、軽く鳴らす。

「よし。発声練習はした?」
「はい、済ませました」

茉璃愛先輩は、軽く引いて指を慣らすと──

「練習しましょうか」
「はいっ!」

指がしなやかに動いているので、ピアノの音に無駄がない。歌っている方も気持ちがいい。

歌い終えると、みんな入ってきた。
音楽部は、三年生が四人、二年生が二人、一年生が三人という少ない人数で成り立っている。
軽音楽や吹奏楽の方が人気だから。

「優歌ちゃん、相変わらずいい声してるね」
「ありがとうございます、朋加先輩」

二年の矢住朋加(やずみ ともか)先輩は、わたしと同じヴォーカルで、よくアドバイスをくれる。

「優歌ちゃん、ちょっといい?」
「はい、先輩」

茉璃愛先輩と、反省点などを話し合い部活はこれで終了だ。