茉璃愛先輩の言葉を真剣に聞く。

『でも、もう……いいよ。
私、律玖くんと……

別れたから──……』

「っ!?」

『じゃあ、それだけだから切るね』

プーっプーっ……

【メッセージは以上です】

指も、足も動かせない。瞬きすらもできない。


別れた?
あんなに想いあっていたのに。


「そ……だ……」

嘘だ。

「茉璃愛、先輩」

気が付いたら家を飛び出していた。
走って走って、病院へ向かった。



日が落ちて、電灯が灯りだす頃、病院に着いた。

──コンコンッ
焦り気味にノックをした。


「はい、どうぞ」
「失礼します!」

茉璃愛先輩は一瞬驚いた顔をしたけれど、笑って迎えてくれた。

「どうしたの?こんな遅くに」
「あの電話っ……どういうっ……」
「あ、聞いてくれたんだ。どういうも何もあのまんまだよ」

笑顔のまま答える。

「律玖さんの事、好きなんじゃないんですか!?」
「言ったでしょう?別れたって。好きなのに別れる人なんていないよ」

嘘。
律玖さんの事、そんな簡単に……。

「それでっいいんですか!?律玖さ……」
「いいの。二人で話し合った結果だから。口出しは許さないっ……」

目をすっと細めて、先輩から笑顔が消える。

「すみません……」
「ただ一つ、誤解しないでほしいのはね」

胸に手を当てて、祈るように目を閉じて静かに先輩は言った。

「私……本当に律玖くんが好きだったの。
この世界が壊れてもいいくらい……律玖くんが好きだったの」

この言葉の意味が何となくわかった。

「っせんぱいっ」

律玖さんの事、好きだけど。
茉璃愛先輩には、律玖さんの隣で笑っていてほしかった。
そう思っている自分がいる。