◆◆◆◆◆

──ざぁぁぁぁ……

雨のしずくが地面に落ち、跳ね返される。
その音で目を覚ました。

カーテンを開けて空を見ると、どんよりとした雲が広がっている。



「もう、二日たったんだ……」

リビングへ行くとサンドイッチが置いてあった。お母さんが作ってくれたらしい。
夜勤で、眠いはずなのに。

それを食べ学校へ行った。





「栞衣奈っ」
「優歌っ、おはよ!!」

手を振り、他愛もない事を話す。
でも、いつものように楽しむことはできなかった。


「あ、栞衣奈。今日一緒に帰ろう」

それだけ言うと席に着いた。








──……

「優歌、帰ろう」
「うんっ」

鞄を持ち、教室を出た。

「ね、この前約束したクレープ、おごって」
「まだおごっていなかったね。分かった」

帰り、クレープをおごり自分も買うと、栞衣奈がぽつりと言った。

「優歌ってさ、何で一人で抱え込むの」
「へっ?」

クレープにかぶりついた。

「もっとちゃんと話してほしいよ。優歌の悩み……」

口にクリームをつけながら栞衣奈は言った。
そのクリームを取り、私は口に含んだ。

「親友だもんね」
「そ、親友!」

手を握って満足げにクレープを頬張った。










「ただいま」

帰宅すると誰もいなかった。
お母さんはもう仕事へ行ったのだろう。
スマホを確認すると留守電があることに気づいた。

「留守電……?」
留守番電話サービスにコールする。

【メッセージが一件、入っています。十七時三十四分。ピーッ】


『優歌ちゃん……?』

耳に入ってきたのは、茉璃愛先輩の声。
哀しそうな、寂しそうな。
そんなものが感じられる声だった。


『茉璃愛です。この前はありがとう。助かったのは優歌ちゃんのおかげだよ』

無理して明るくふるまっているようだ。

『優歌ちゃん、ごめんね。私、怖かったの。優歌ちゃんに律玖くんをとられることが……。
だから、信じてるとか言って苦しめちゃったね』

一歩も動けない。