「茉璃愛先輩、大丈夫です。ですから……」

「っは……──」

荒い呼吸のまま、目を閉じてしまった。

「先輩!!」
「お願いします」

律玖さんがインターホンを切り、茉璃愛先輩の近くに来た。

「茉璃愛、大丈夫だ。……俺が、いる」

手を強く握っているのがわかる。
弱弱しく、茉璃愛先輩も握り返す。

「保健室、行くからな。もう少しだ」

抱き上げると歩き出す律玖さんの後を、三人分の鞄を持って私は追いかけた。




「茉璃愛!!」
「おばさん、茉璃愛が」

保健室の前には、茉璃愛先輩のお母さんだろう女性がいた。律玖さんに駆け寄り、先輩の顔を見た。

「最近、調子が悪かったから……ごめんなさいね。律玖くん」
「いえ、車まで俺が連れて行きますよ」
「ありがとう」

茉璃愛先輩は、お母さんに連れられて病院へ行った。それを見送る、律玖さんと私。

「倒れたこと、誰にも言わないでくれないか?あと……アイツの事は何も……」
「分かっています、何も訊きませんから。私は、先輩が早く良くなるのを願うだけです」

一礼をし、私は律玖さんに鞄を渡した。
そのまま帰る。


……見せつけられたようだった。

先輩の事を心配している律玖さんのあのまなざし。あの表情。

初めて見た。
茉璃愛先輩を想っているから、あんなに心配するんだ。

そう思うと、胸にズキンと痛みを感じた。