「そう……ですか」

『好きだよ』その言葉が耳に入って来た時、胸が痛んだ。

少し、期待したんだ。
『幼馴染だから、長い間一緒にいたから付き合うようになった』と答えてくれると。

バカだよね。


「どうかした?」
「いいえっ、ありがとうございます。失礼なことを言ってしまったのに、答えて下さって」
「優歌ちゃん?」
「失礼しますっっ」

慌てて屋上を出た。

嫌だ。
律玖さんの気持ちを訊いたのは自分なのに。

こんなに苦しいのは、こんなに泣きたくなるのは、何故?


「なんで、涙、なんかっ……」

階段を下りた時に足を止めると、涙が頬を伝う。

「ぅっ……」

涙は止まらない。
必死にぬぐうのに止まらない。

失恋したみたいな、この感じ。



~~♪♪

スマホが鳴った。
開くと、非通知になっている。


「はい……」
『優ー歌っ。会いに行くよ……』
「!?誰っ?」

プーっプーっという音が虚しくなっている。
残っていた涙が一粒、落ちた。

“アイニイクヨ”
今の声は……

「渉……?」


会いに、いくって言ってた。
校舎の中だもん、大丈夫。会いに来れるわけがない。分かっているのに怖くなる。


「優歌」

何かを楽しむような声が耳に飛び込んできた。この低い声。
前方を見た。

立っている人に目を疑う。
嘘だ。

私は、出す言葉もなかった。

「泣いているのか?」

そう言いながら近づいてくる渉。

「何で、ここにっ……」
「優歌に会うためにだよ。愛してるから」

自然と後ずさりをする。

「俺に別れようって言ったこと後悔してるんだろ?俺に会いたくて泣いていたんだろ?」
「ちがっ!」
「俺のこと愛してくれてるもんな、優歌は。だから、また……デートしよ?」

腕を強くつかまれ、首を横に振るのが精いっぱいだった。