「復活の蔵」とは

「おお…… これがハメパチマシーンね。本格的だわ」
 パソコン、プリンタ、そして型抜きする専用マシーンを見まわして驚きの声を上げている。
「作ってみるかい? 」
 十蔵は丁寧にレクチャーしながら、作って見せた。
「へえ…… 位置合わせとか、結構難しそうね」
「キットは、丸型、角型、ハート形、お守り形、ピック形なんかもあるよ」
「ちょっとやらせて…… 」
 慣れないと、おっかなびっくりで時間がかかった。
「うわぁ。何とかできたわ…… 」
「それで、こっちがUVインクジェットプリンタ」
「うはあぁ。こんなに小さいのね。これで写真を? 」
「そう。ちょっと時間がかかるから、データを持って来てくれれば作ってあげるよ」
「ええっ! 作るわ。お願い」
「で。こっちがレーザー加工機」
「こんなものまで! 凄いわ! 高いんでしょう」
「UVプリンタも、レーザー加工機も、30万くらいだよ。父の伝手で少し安く買えたんだ」
「ねえ。時々来ていいかしら」
「はは。気に入ってくれたみたいだね。もちろん良いよ」
 桐乃は目を輝かせて、すっかりハマった様子だ。
「もっとこじんまりとした、やり方してるのかと思ってた。本格的なのね」
 十蔵もなんだか嬉しくなって、笑顔を返した。
 帰り際、蔵人がいる社務所に桐乃がやってきた。
「蔵人くん。さっきはごめんなさいね。時々来させてもらってもいいかしら」
 顔がすっかり綻んだ桐乃は、かなりの美人だった。
「えっ。いいですよ。もちろん、どうぞ」
「誤解がないように、話しておくけど『復活の蔵』のストーリーは、実話なの」
「そうですか。細かいことは、覚えてないですけど。1年くらい前でしたかね」
「友達がね。この蔵に願かけしたら、寄りが戻ったのよ。だから、事実無根なんかじゃないわ…… 」
「ありがとう」