夏休み。僕は月乃さんと一緒にあの小説の聖地と思われる場所を回りだした。
 月乃さんはやっぱり変わっていたけど、その気まぐれや元気さが見ていて気持ちよかった。一か所ごとに見せる笑顔、楽しそうに話す姿に、引き込まれた。
 夏休みが終わる頃には、好きになってる気がした。……この町、とか、が。

 星也くんと行ったあの小説の聖地巡りは初めてじゃない。
 だから時々、ひそひそ声が聞こえた。まただよ、変な子だ、あの母にして……
 やめはしない。
 舞台がこの町でありそれには意味があると信じるに足る根拠があるから。
 行く場所ごとに星也くんの表情はころころ変わって、見ていると私も嬉しくなった。