ブームは落ち着く気配なし。再びあの町に行く見通しなし。
 なのに、どうしてもまだ気になってる。
 いつものように情報を集めてると、一つの観光キャンペーンのお知らせが目に入った。
 そこには地域の観光推進課の職員の写真が載ってる。
 そこにあった名前と、キャンペーンのキャッチコピーに、胸が騒いだ。

 誰もいない朝の川辺、僕は自転車を停めて位置を確認して、石の階段に座った。
 よかった。場所自体は変わってない。でも、だから気持ちも複雑だ。今でもふとした瞬間に月乃さんが現れそうで。
 現れてほしいんだ。
 だから必死に採用を通した。
 もし気づいてくれるのなら、どうか。
『ほら、ここに君がいるよ』