高校3年生の時。
僕は18歳になったので、大人向けの映画をレンタルショップで借りたりしていた。
だが、自慢じゃないが、僕はどうもそういう作品は好きじゃなかった。
成人向けレンタルしといて格好つけてんじゃねーよとツッコミを入れたいと思いますが……。
こう見えてロマンチストでして。
なんというか、女性が一方的に痛そうに男優から「おらぁ!」とか「ドヤァ!」てのが多く感じて、相互ラブみたいなのがあまりない印象でした。(これは僕が見てきたものなので、探せばあったかもしれません)
あくまでも同意の上で、イチャこかないと、見ている僕は「うわぁ、痛そう……」「キッツ…」とドン引きしていることが多数でした。
そんな時、とあるレーベルを見つけました。
その名も巨乳シリーズ。
ありがちな童貞キラーなタイトルでした。
この作品はあまり痛いことしないし、どちらかというと女性もケラケラ笑っていることが多かったです。
相互ラブもあったし、イチャラブの傾向が強い気がしました。あくまでも20年ぐらい前の話です。
その中でも気に入ったのは、秘書シリーズでした。
何回もレンタルするぐらい好きになりました。
なので、親に内緒でネットオークションでDVDを購入。
あまりにも素晴らしかった内容に感動した僕は、高校の友達に話をしました。
すると若い男子のみんなはこぞって、目をキラキラと輝かせこう言うのです。
「味噌村! 今度学校に持ってきて!」
言われた僕は、少し手放すのが寂しく感じましたが、ここは男同士、いいものは共有しあわないとなぁと感じ、快くDVDを友達に貸しました。
翌日、学校に行くと友達は、興奮気味にこう言いました。
「味噌村! あれ、すげーな! しばらく貸してくれよ!」
「え……」
たちまち、クラスで僕のDVDは評判になりました。
すると、まだ友達に貸している状態なのに、他の男子生徒が「俺にも貸して」「僕にも」と次々にリクエストが飛び交いました。
僕に返ってくることなく、DVDは友達から友達へ……どんどん数珠つなぎのように、回されていきます。
男子生徒たちは、嬉しそうに僕に言います。
「味噌村! ありがとな! 自分的には90点だわ!」
「中々返したくなかったけど、他の奴が早く早くってうるさいから貸したわ」
みんなやりたい放題でした。
女子の目の前で、グシャグシャになった茶封筒を堂々と、教室の中で毎日前から後ろへ、右から左へ……気がつくと、隣りのクラスにまで、行ってしまう始末。
年末に一人の友人に貸してから、数ヶ月。
既に僕は大学受験に合格し、卒業間近となりました。
いい加減、返してもらわないと、僕も嫌だったので、いろんな友達に現在、所有している人物を聞くことになりました。
皆、ニヤニヤ笑いながら「ああ、アレねぇ。良かったわぁ。あいつに貸したわ」と言うばかり。
僕がききまわっていると、40人以上が見たと回答が返ってきました。
知らず知らずのうちに、こんなにも見られているとは……とても困惑しました。
最後の一人に「DVD知らないか?」と尋ねると、意外な人物が現在、手にしていることがわかりました。
「秘書ものだろ? メガネ先生が借りてったよ」
「ええ!?」
メガネ先生というのは、とても真面目な教師で教育熱心、生徒たちからも人気でした。
まさかあのメガネ先生が、巨乳シリーズを、ましてや生徒のDVDを勝手に拝借しているだなんて……。
とんだ卒業祝いだなと思いました。
職員室に入って、メガネ先生に声をかけます。
もちろん、小声で。
「先生、僕のDVD持っているって本当ですか?」
僕がそう言うと、先生は苦笑いで答えました。
「あ、うん。悪いな味噌村。卒業前なのにさ……俺、今から帰りだから車で送ってやるよ。その時に、な」
先生はウインクして、ニヤッと笑いました。
僕はメガネ先生の車に乗って、家の近くまで送ってもらいました。
思っていたより、先生は成人向けの映画が大好きらしく、僕の持っていたDVDをかなり気に入ったそうです。
数ヶ月ぶりに返却されたDVDはボロボロで、ケースも傷だらけ。
一応、新品で買ったはずなのに……。
車内で先生はこう言いました。
「味噌村はセンスあるなぁ。大学行ってもがんばれよ」
メガネ先生とはあまり話したことないのに、なんで学業とは関係のないところで褒められているのだろうか? と感じました。
その後、風の噂ではメガネ先生は高校教師をやめて、夢だった小学校の教師になったそうです。
幼い子供たちと、笑って楽しく過ごしていることを切に願っております……。
まだ僕と妻が付き合いはじめころの話だ。
僕が二十歳で彼女が十八才。
彼女が言うには、人生で痴漢にあったことがない。
周りの女友達はたくさん尻を触られるのに「私だけされたことがない」となぜか怒っていた。
まあ当然彼氏の僕は、そんな経験必要ない。むしろやられたら、怒るよと諭していた。
彼女曰く、女として魅力がないからじゃないか? と疑っていた。
ちょっと僕にはわからない感覚だった。
好きでもない男に触られて嬉しいか? ということ。
そう彼女に伝えても、女としての意地みたいなもんだと言っていた。
(現在はそんなこと思っていないらしい)
まあ若いから、そういうことを思っていたのだろう。
危険な考えだ。なにかと物騒な世の中だし。
未だ僕の妻は痴漢の経験はない。パートナーの僕からしたら、非常に安心できる。
だが、それは違った。
彼女は天然なところがある。
つまり鈍い。
結婚してしばらくして、プールの話をしていた時だ。
潰れたプールの話題になって、懐かしいと盛り上がっていた。
「ああ、あそこのプールに小学生の時、よく行ったよ」
最初は楽しい思い出を語っていた妻だが、何かを思い出したかのように語り出した。
「あのプールでさ。一回変な人にあったんだよね」
「え、変な人?」
僕は嫌な予感がした。
「うん。女友達と流れるプールで泳いでたらさ。後ろからびったりくっついて来る男の人がいてね……」
「ちょっと待って。それ妻ちゃんがいくつのとき?」
「えっと、小学校の5、6年生ぐらいかな」
僕も妻も成長が早いほうで、高学年の頃には第二次性徴が始まっていた。
不安が的中して、悪寒が走った。
「それで、その人はなにをしてきたの?」
語気が強まる。
「別になにをしてくるわけじゃないけど、ずっと私の後ろにべったりくっついて、なんか固いものをお尻あたりにグリグリしてきたんだよね」
「……」
やはりか。
「しつこいから、振り返って相手の顔見たら、『チッ!』て言って逃げていったよ。なんだったんだろうね?」
それ痴漢だよ……とは言えなかった。
僕は中退したが、以前とある底辺大学に通っていた。
一年間、ちゃんと単位を取得できたが、他に夢ができてやめたのだが……。
その大学の生徒たちは男性が多く、女性は一学年に10人いるぐらいだった。
だから出会いがほぼない。
むさ苦しい野郎ばかりが、集まっては「昨日のアニメ」とか「あのエロゲー神」とか、いわゆるオタクが多く感じた。
なかには同じ系列の高校から推薦で、入学したヤンキーたちもいた。
そのほかは、遠い地方からやってきた田舎の学生が多かった。
県外から福岡市に初めて一人暮らしする子が大半。
18才とはいえ、まだ子供だ。
入学して初日でバタバタと退学していく子が多い。
理由はホームシック、家が恋しい、一人暮らしが辛いなどなど……。
けっこう可愛らしい理由で中退していく。
そんな中、ちゃんと卒業まで在学できる人たちは、大学の寮に入ってたり、サークルやゼミで友達をしっかり作れるコミュ力が高い人が多かった。
僕は地元民だったので、実家から通えたし、特に不便はない。
一か月もすれば、だいたい講義に集まるメンバーは決まってきて、仲も自然とよくなる。
若い男が集まれば、講師の話をそっちのけで、下ネタで盛り上がる。
友達の一人に、かなり下品な子がいた。
陳平くんだ。
出会いがない大学で、カノジョと付き合っていたのは僕と陳平くんぐらいだった。
ただ、陳平くんは冗談でも酷いことをよく言ってくる。
「おい、味噌村。お前のカノジョのプリクラ見せてよ」
「いいよ」
陳平くんは僕のカノジョの姿を見るなり
「なあ。ちょっとこの子とヤらせてくんない?」
「ハァ? なに言ってんの?」
冗談でもあまりにブラックな話に僕はドン引きしていた。
「いやぁ、なんかさ。こういう顔の子ってどんな感じなのかなって……一回でいいからさ。お願い!」
「嫌だよ、そんなの」
その後もしつこく彼は必死に手を合わせて懇願するのであった。
もちろん、僕は断るし、どこまでが彼の冗談なのか、知る由もなかった。
それからしばらくして、大学の講義に参加しようと教室に入ると、慌てた陳平くんが僕の顔を見るなり、駆け寄ってくる。
いつもふざけた陳平くんが顔を真っ青にしていた。
「なあ! 味噌村! 相談があるんだ!」
「いいけど。なに?」
「俺の高校の時のさ。元カノがさ、『あの日』が来ないって言うんだよ」
「……」
朝から一体なにを聞かされているんだろう、と僕は絶句した。
「どう思う?」
「いや……どう思うって避妊してたんでしょ?」
彼は真顔で答える。
「え……味噌村って、避妊すんの? ウソだろ?」
それを大声で語る彼もどうかと思った。
周りにいた友人も、陳平くんが「みんなもつけないよなぁ!?」なんて言われたから固まっていた。
僕はとりあえず、彼を席に座らせて、落ち着かせる。
「陳平くん、その子にちゃんと丁寧に接してたの?」
「ううん、別れてもたまにするような関係で、先月福岡にその子を来させて……」
「もういいよ、生々しい…」
「俺、18歳でパパになるの? デキ婚しないとダメ?」
それを僕に聞くのか? と言いたかったが。
「そりゃそうでしょ。責任持ちなよ」
「うわぁ、マジかぁ~ 大学辞めて働くかのよぉ~ 勘弁してくれよぉ~」
彼はそう嘆くと、頭を抱えていた。
バカだなと思っていたが、ここまでバカな子だったとは、驚きだ。
後日、元カノさんの話は誤解だったようで、彼は安心していた。
僕は今後そんなことがないようにと、注意したが、それでも陳平くんは「嫌だ」と言って耳を貸さなかった。
それからまたしばらくして……。
彼は合コンなどをよくやって、カノジョというか、関係を持ちたいがために夜な夜な女の子を集めていたらしい。
そんなにイケメンとかではないが、まあ話していて楽しい男性だったし、女子からは人気がありそうな人だった。
陳平くんは、そんな最低なクズだが、女性の好みは「清楚系」が好きと言っていた。
白いワンピースに麦わら帽子が似合う黒髪ロングのロリッぽい子が良いと、毎日聞かされた。
携帯電話に保存していた芸能人の画像は、ほぼ低身長でバストも控えめな清楚系アイドルや女優の卵でいっぱいだった。
また陳平くんが僕に相談があると言ってきた。
ろくなことじゃないんだろうなって思ってたけど、まあ聞いてみる。
「なんかさぁ。この前合コンでJKの連絡ゲットできたけど、まださせてくんないの? どう思う?」
「ちょっと待って。なんで君、女子高生と知り合ってんの? 相手いくつ?」
「16歳、一年生」
「……」
怖くなってきたので、もうこちらからは質問しなかった。
「それでさ。連絡とりあって2週間経つのに、まだダメなんだって! おかしくね?」
「……フツーじゃない?」
「普通じゃねーだろ! 3日でも遅いわ! なあ味噌村はさ。俺とこの子、脈なしだと思う?」
脈があったら、ダメだろと思ったが、まあ優しく諭してあげる。
「あれじゃない? 陳平くんのことが怖いんじゃない?」
僕がそう言うと、彼は顔を真っ赤にして怒る。
「はぁ!? 俺、女には優しいぜ?」
元カノをあんな扱いしといて、よく言うなと思った。
「違うよ、そうじゃなくて……相手はまだ16歳の子供じゃん。そういうコトが怖いってこと」
「ああ……そっちね。普通の子ってそんな感じなの? わからんわ~」
驚いた顔で首をかしげる陳平君。
彼はどこまでが本当でウソかがわからない。
そこで話が終わるかと思ったのだが、彼はまだ粘る。
「でもよ、見てくれよ! そのJKさ『陳平さんに』ってこんな画像送り付けてくるんだぜ?」
ガラケーをのぞくと、黒髪で童顔の少女が下着姿で映っていた。
講義中ということもあり、僕はすぐさま彼の携帯電話を隠す。
「ちょっと! なんてもん出すの!?」
見ちゃいけないものをみたと思い、彼にすぐ写真を閉じるように注意する。
「だってさぁ……こんなもん、送り付けられたらワンチャンあるって思うじゃん…」
当時流行っていたアヒル口で、上目遣いをする。
「はぁ……陳平君。年上でしょ? もうちょっとその子を大切にしてあげなきゃダメだよ」
僕は彼にキツく説教したが、反省の色はなかった。
それから一年間、彼と共に過ごしたが、年がら年中、そういうことを聞かされた。
本当に女性をモノとしてしか、見ない最低のヤツだと思った。
だが、僕が大学をやめてもしばらく交流は続き、メールで互いの近況報告をとりあっていた。
二年生になってから、彼はなにを思ったのか、バイトもせず、ゲームもしないで、勉強一本で頑張っていた。
理由を聞くと、「今の大学を卒業してから、教員免許をとるために別の大学に行く」と意気込んでいた。
悪寒が走る。
まさかとは思ったが、僕は恐る恐る聞いてみた。
「先生になるって、どこの?」
「しょうがっこう」
「……」
彼はその後、成績をほぼトップで同大学を卒業し、別の大学でしっかりと教員免許をとって、教師になったらしい。
陳平くんがどうか、子供たちの道しるべになれるような、良き教師に成長していることを切に願う……。
僕の死んだ父方の祖父、おじいちゃんの話。
まあ気性の荒い性格で酒を飲んで悪酔いしたら、物をすぐに「ぶっ壊してやる!」とか「家を燃やしてやる!」とか言うハチャメチャな人だった。
酔ってない時は、けっこう厳しめなおじいちゃんだった。
まあでも、無口な父よりは面白い話もよくしてくれたし、酒さえ飲まなければ、いいひとだった。
妻のおばあちゃんという人は、対照的でお嬢様みたいな育ち方で、大人しく、死ぬまで女の子らしい人だった。
ある日、おじいちゃんが、僕にこう言った。
「おい、幸太郎。じいちゃん、腹が減ったな。なんかおやつあるか?」
「えっと、ちょっと待ってね」
僕はおやつが入っているカゴを探ってみる。
母がいつも買い込んでくるので、何かと困らない。
だが、じいちゃんが好きそうなものはないなぁと、思っていたら、後ろから声をかけられる。
「おお! 犬の糞があるじゃないか! じいちゃん、それ好きだから一つくれや」
「え……?」
僕は耳を疑った。
「なんのこと?」
「犬の糞があるやないか。そこに」
僕が手にもっているのは、黒糖のかりんとうが入った袋。
まさかとは思うが、これを言っているのか?
「かりんとうのこと?」
「そうよ。犬の糞って言わんか?」
「言わないよ……」
とりあえず、かりんとうをおじいちゃんに渡す。
それを見ていたおばあちゃんが、口を大きく開いて呆れていた。
「ねぇ、じいちゃん。変なこと、幸太郎ちゃんに教えないでくれる?」
「ハァ!? 犬の糞はいぬのくそだろが!」
どうやら、おばあちゃんは悪い冗談だと思っていたらしい。
「ウソでしょ?」
「言うよ! 俺がガキの時は、近所の駄菓子屋にいって、『おばちゃん、犬の糞ちょうだい!』って頼みよったぞ」
「じいちゃんの育ったところだけじゃない……私の周辺じゃ、誰もいわなかったわよ。かりんとうって言ってた」
「な~んか、上品ぶって。幸太郎、覚えとけ。これはいぬのくそだぞ!」
僕は苦笑いするしかなかった。
「幸太郎ちゃん、じいちゃんのこと信じたらいかんよ! お母さんに怒られるから……」
おばあちゃんが僕にそう注意すると、おじいちゃんはふてくされて、犬のウンチをバクバク食べていた。
「犬の糞はうまいぞ! 幸太郎!」
それ以来、僕はかりんとうがどうしても、それに見えてしまうようになってしまった……。
僕には年の離れた兄がいる。
結婚していて、長年仲の良い夫婦だ。
今はもう死んじゃったのだけど、結婚して間もないころに、兄の夢だった犬を飼うことになった。
結婚式にも出すぐらい二人とも、子供のように可愛がっていた。
二人とも旅行好きで、そのワンちゃんは近所のペットホテルに預けていたらしい。
また旅行以外の時もよく利用していたらしい。
だが、長年利用していたのに、いつ頃からか、兄が電話の予約をすると、毎回……。
「すいません。予約がいっぱいです」
と断られるようになったという。
その店は小さな個人店で、大人しい女性が一人で経営していたらしい。
不思議に思った兄が、今度は奥さんに電話してもらうように頼む。
兄嫁が、さっそく電話すると、キッパリとこう言われたらしい。
「今後、味噌村さんのご利用は断らさせていただきます」
そう強い口調で、言われたらしい。
当然、兄嫁は訳がわからず、「どうしてですか?」と訪ねる。
「理由は言えません」
と断られて、一方的に電話を切られたそうな……。
その一連の出来事を、兄に伝えると、二人して首を傾げたという。
事態を重く見た夫婦は、互いに「何か悪いことしたかな?」と情報を整理することにした。
僕の兄は幼いころから老け顔で、何故か強面で通っている。 (本人は気の小さなおっさん)
だから、お店の大人しい店長からは怖がられていたらしい。
これに関しては、兄は慣れっこなので、仕方ないと思っていた。
そんなことで、出入り禁止を食らうだろうか?
お店の女性はきっと兄が怖いから「予約でいっぱい」と断っていた……。だが、怖くない兄嫁が電話したことで、出禁を伝えられたのだろうと二人は推測した。
ならば、原因は兄嫁か? なんて話題にもなる。
兄嫁はおっとりとした人で、別に悪い人じゃない。
しばらく、二人で考える……。
そこで、一つだけ答えが浮かんだそうな。
「「Tバックだっ!」」
兄嫁がワンちゃんを預けに行ったときのこと。
大人しめで真面目な店長さんが、腰をかかがめた際に、赤いレースの派手なパンティ、Tバックが見えたらしく。
ギャップが刺激的だったのか、兄嫁は夕方、仕事から帰宅した兄にその話を笑いながら、報告したらしい。
兄夫婦の住んでいる家は、駅の近くで、夏で暑かったので、窓を全開にしていたらしい。
そんなに大きな声で話していたわけではないのだが……。
自宅のすぐ裏は、帰宅ラッシュのサラリーマンやOLでいっぱいだ。
「今日さ、あの店の人が、赤いTバックを履いてたの見ちゃった!」
「ウソだぁ?」
「本当だって! 私、しっかり見たもの、すっごい派手なやつ!」
「えぇ……あの人、そんな下着履くような人に見えなかったよ? 真面目で大人しそうだったし……」
「いやいや、本当だってば! レースで赤くて……」
と夫婦はキッチンで、料理を作りながら、談笑していたそうだ。
「「……」」
出禁になるようなことは、これぐらいしかないと、二人は原因を突き止めたらしい。
最初は不服だったが、風の噂でこれが店長の耳に入ったのなら、「ま、しょうがないね」と納得してしまったらしい。
ただ、兄夫婦としてはそんなことになるなんて、思っていなかった。
とりあえず、ワンちゃんは別のペットホテルに預かってもらうことにした。
余談だが、その後ワンコは去勢手術を受けて、大人しくなった。
同じオスとして、とても同情した。
なんにしても、犬に罪はない……。
父方のおばあちゃんが生きているころ、よく若い時の苦労話をぼやいていた。
その中でも、孫の僕からして、一番、衝撃的な話がある。
多分、戦時中のころの話だと思うけど……。
よく女学校の話をしてくれた。
「幸太郎ちゃん。あのね、おばあちゃん、保健体育の授業が嫌いやったわぁ」
「え? なんで?」
時代は違えど、ただの保健の授業だ。
なにがそんな嫌だったのか、気になった。
すると、おばあちゃんは顔を歪めて、こう語りだす。
「保健の授業が始まるとね……毎回、先生が美子(仮名)さんていう子を教壇に立たせるのよ」
女学校なので、生徒は女子しかいないらしい。
「教壇に立たせたら、先生はすぐに『美子、早く脱げ!』って素っ裸にさせるの……」
「え……」
僕は言葉を失った。
一応、聞いてみる。
「その先生って男?」
「当たり前じゃない……」
セクハラってレベルじゃないと、黙って聞いていた。
「脱がせたらね。その子の両手を広げさせて、解説をはじめるのよ」
おばあちゃんが言うには、当時の男女差別は相当酷く、また大人の先生に何も言えなかったらしい。
美子さんも毎回指名されるので、黙って無表情で言うことを聞いていたらしい。
素っ裸にされた美子さんを、人形のように扱う教師。
それを見て、無言で固まる女子生徒たち。
職権乱用どころか、犯罪だ。
その変態教師は、伸びる指示棒で美子さんの胸に触れて、こう言いだす。
「見ろ、みんな。美子は14歳だから、乳腺が発達してきたな。女ってのは、こういう風に成長するんだぞ」
「「「……」」」
直接、手で触れるわけではないが、教師は美子さんの身体を隅から隅まで、なめまわすように、一々指示棒で触れては説明をする。
「ここが股間だな」「ここが脇だな」「ここが尻だな」
そんなの女子生徒は説明されなくても、わかっているのに、一人延々と喋っているらしい。
おばあちゃんは、悔しそうに言っていた。
「美子さんがかわいそうだったわぁ。子供のばあちゃんじゃ、なんもできんかったからねぇ」
僕はこの話を聞いて、思った。
その変態教師は、保健体育と偽っては、美子さんが好きだから、裸にさせていただけなのだろうと……。
おばあちゃんは、無事に女学校を卒業したあと、僕のおじいちゃんと結婚した。
だが、美子さんはきっとトラウマを抱えて生きていたのだろうと思うと、僕は怒りを覚えた。
その後は知らないが、きっと変態クズ教師は、わいせつな犯罪で捕まったのだろうと思う。
了