僕が。

 ――殺した。





 自分のせいで、彼女は死んだのだ。

 のちに少女の事故が原因で、蛍の両親は離婚したと聞いた。

 蛍。
 蛍の命、未来、家族。

 すべて、自分が奪った。何もかもが透のせいでなくなってしまった。ついさっきまであった温かい微笑みが、浮き立つ気持ちが、永遠に手の届かないものになってしまったのだ。

 あまりの罪の重さを背負い切れずに、透の記憶はぽっかりと失われた。
 ほたるび骨董店を去り母と暮らす家に戻ると、その夏のことはぼうっと霞む夢の中の出来事のように次第に消えていった。

 かすかな夕虹が、夏の終わりを彩っていた。