「うわぁ!! 」
 うなじの冷たくヌルリとした感触に、口から泡を吹きながら飛び退いた!
「蛇よ! そんなに大きな声出さないでよ! こっちがビックリするわ! 」
「ねえ。お姉ちゃん…… やっぱり帰ろうよ…… 」
「テオ! そんなことじゃあ、いつまでも一人前の商人になれないわよ! 」
 少年は、姉マリアと共にダンジョンに入っていた。
 ここはエトランシアという国。
 点在する街や村の外にはモンスターが闊歩しているため、商人と言えども武器を持ち、戦って家財を守らなくてはならない。
 一人前の商人を目指すテオも、修行のために初心者向けのダンジョンに入って、モンスターと戦うつもりだった。
「テオだって、毎日剣を振って稽古して来たんだから、いざとなれば戦えると思ったんだけどね…… もっと、心を鍛えなさい! 」
「マリアお姉ちゃんは、魔法を使えるから、モンスターが出たら火で倒してよ! 」
「あら! そんなこと考えてるのね! じゃあ、私は帰るわ! 」
 マリアは、くるりと踵を返して本当に帰ろうとした。
「ちょっ! ちょっと待ってよ! 冗談だってば! 僕が戦うよ! ケガをしたとき、治してくれないと、死んじゃうかも知れないよ! それでもいいの!? 」
 慌てて弁解する弟を、冷めた目で一瞥すると、
「はぁ…… 死んでもいいわ…… 」
 再び出口へ向かって歩き出した。
「うわあぁ! それ言っちゃう!? お姉様! 僕のおやつ1週間分あげますから! お願いです! 待ってください! 」
 マリアの怒りの炎に油を注いだ様子で、そのまま本当に出て行ってしまった。
「ああぁ…… 心細いなぁ…… 余計なこと言わなければよかった…… ちょっとだけ奥を覗いて帰ろう…… 」
 半べそをかきながら、テオは腰の剣を確かめるように握ると、勇気を振り絞って奥へ入って行った。
 松明の火を前にかざし、様子を伺いながらゆっくりと足を踏み出して行く。
「僕、ダンジョンって初めてなんだよね…… こんなところに一人で置いてけぼりにするなんて、ひどいよ。お姉ちゃん…… 」
 愚痴をこぼしながら、小さな歩幅で、足元の石などの障害物を払いのけながら慎重に進む。
 初心者用ダンジョンは、あらゆる冒険者が腕試しに一度は入るところである。
 古い壁や床には、ナイフで彫ったと思われる、記念の落書きが至る所にある。
 そんな落書きの一つに目を止めた。
「ん? 『マリア』って書いてある…… もしかして、お姉ちゃんかな…… 」
 その隣に、「テオ」と彫り、離れて満足そうに見つめた。
「僕の名前は短いから楽勝だね! うん! これが墓標にならないように頑張ろう! 」
 何気なく口から出た「墓標に」という言葉が心をまた挫けさせた……
「うわあぁ! 死ぬ! 僕は多分死ぬ! 」
「はぁ…… 何で、あんたは気が小さいのかしらね…… 」
「あっ! お姉ちゃん! いや、お姉様! 大魔法使い、魔道士様! 」
 テオはマリアにすがりついて、歓喜した。
「僕、おしっこ漏らしそうだったよぅ…… もう弱音を吐かないから、ついて来て! 」
「私は2年前にここに来て、名前を刻んだのよ…… 懐かしいわね」
「お姉ちゃんは、才能があるから、きっと凄い魔法使いになるはずだよ」
「テオ。あんたも強い戦士になって欲しいの。強くならないと、本当に死んでしまうのよ…… 」
 2人の両親は、国に仕える優秀な戦士だった。
 父親は屈強な闘士であり、母親は魔法使いの道を極めていた。
「ロダニア地方へ遠征に行ったときに、父さんも母さんも、やられてしまった…… わかっているんだけど、僕には戦いの才能が無いんだよ…… 」
「ねえ。テオ。戦いの才能なんて言葉に意味はないわ」
「どういうこと? 」
「お父さんと、お母さんはとても強い戦士だったし、勇敢な心を持っていた。でも死んだの。私たちに未来を託して死んだのよ。あんたが物心つく前に、お父さんが『テオを鍛えてやってくれ。この国で生きていくには、真の強さが必要だ』と言ってたわ…… 」
 マリアは壁に刻まれた名前を見て、しみじみと言った……
「お姉ちゃん。どうして、僕たちは父さん母さんと、一緒に笑って暮らせなかったんだろう…… 」
 暗いダンジョンが、テオの心にも影を落としているように、普段見せない弱音を吐かせた……
「弱音は吐かないって言ったでしょう…… 」
 マリアはテオの頭に手を置いた。
 テオは10歳になったばかりである。
 平和な世の中であれば、まだ友達と一緒に野山を駆けまわったり、読み書きを勉強したりしていてもおかしくない歳だ。
 ダンジョンでモンスターと戦うなんて、酷なことなのかも知れない。
 歳の割にはしっかりしていて、冒険者の役に立つ一人前の商人になりたい、という明確な夢を持っている。
「ごめんなさい。あんたは何も悪くないわ。この理不尽な時代が悪いの。でもね。きっと平和が訪れるわ。私たちにできることは小さなことだけど、国中の人が力を合わせ、伝説の戦士様が命を賭けて戦ってくださる援護をするのよ」
「うん。お姉ちゃんだってまだ12歳でしょ。魔法の勉強をずっとしていて、凄いと思うよ」
 足元には、人間の物ともモンスターの物ともつかない骨が、あちこちで朽ちていた。
「ねえ。お姉ちゃん。ダンジョンって、みんなこんな風に地獄みたいなところなのかな…… 」
 テオが呟くと、マリアが制した。
「しっ! 何かいるわ! 」
 遠くでヒタヒタと足音を忍ばせるような音がした。
 ガシャン!!
 骸骨が崩れ落ちる音がした!
 グルルル……
「化けネズミだわ…… 」
「僕がやるよ! 」
 テオが剣を抜き放った!
 ジリジリと近づいて行く……
 ゴトン!
 足元の骸骨を蹴飛ばしてしまった!
 驚いた化けネズミが一直線に駆けて来た!
 手には長く鋭い爪を光らせ、牙を剥き出している!
 ギャアアァ!!
 奇声と共に、テオに爪を振り下ろす!
「うわっ! 」
 間一髪! 剣で受け止めると、そのまま動けなくなった!
「どうしよう! くそっ! 凄い力だ! ぐぐぐぅぅ! 」
 渾身の力で剣で押し切ろうとするが、万力のような化けネズミの力の前にビクともしなかった。
 ガギギギ……!
 金属が削れる音がする……
「うわああぁ! この剣! 持ちこたえられないかも! 」
「押しちゃダメ! 円を描くように捻るのよ! 」
「ぐぐぐぐうううぅぅぅ!! 」
 テオは渾身の力で剣に捻りを加えた!
 バキバキ!!
 化けネズミの爪が2本折れた!
 ギャアアァァウ!!
 驚いた化けネズミは、ダンジョンの奥に逃げて行った!
 しばらく呆然としたテオは、暗闇の一点を見つめたまま動けなかった……

 ルタ村に戻った2人は、家に帰って一息ついた。
 この村には、テオとマリアと同じくらいの年齢の子どもたちが集まっている。
 奥に大きな教会があって、孤児をたくさん預かって、共同生活をしていた。
 2人は、ここに両親が残してくれた家があるので、近所の大人たちの世話になりながら不自由なく暮らすことができた。
 国が乱れているせいで、冒険者と同じくらい盗賊も増え、旅をして流れ着いて来る者の中には乱暴を働く者も少なくない。
 そのような質の悪い風来坊から村を守るため、子どもたちは毎日剣術や魔法の稽古を、村のあちこちでしていた。
「今日は、よく頑張ったわ。テオ。疲れたでしょう」
「ううん…… 僕は、結局大事な剣を削っただけだったよ…… 」
「化けネズミに立ち向かったのよ。それだけで充分よ。剣の使い方をもっと研究すれば、充分に戦えるわ」
 マリアは優しく笑いかけた。
 テオは、練習用のこん棒を手に取ると、外に出て黙々と振り始めた。
「頑張るしかないよね! お姉ちゃん! 」
 目にはモンスターに立ち向かおうとする、意志の火が灯っていた……

 翌日、2人は用事で村の大きな往来に出ようとした。
「きゃあ! 」
 村の入口近くで、若い女性が男に絡まれている!
「ねえねえねえ! さっき買った薬草、腐ってナメってたよぅ…… 金返してよぅ…… 」
 30代の無精ひげを生やした薄汚い男が、20代前半と思われる女性の肩に手を回した。
「やめてください! 」
 両手で力いっぱい押し戻そうとするが、男は身体を寄せて、ニタニタと笑って言う。
「お金で返さなくても、あんたで払って貰って良いんだぜぇ…… 」
 テオは、マリアと一緒に、路地の角に身を寄せて覗き見た。
「お姉ちゃん、助けてやってよ! 」
「人間相手に無暗に魔法を使えないわ…… テオ! 昨日の化けネズミよりはマシよ! やっつけていらっしゃい! 」
「ううん…… 他に強そうな人が来てくれればいいのに…… 」
「ほら! 平和のために戦いなさい! 」
「あれって、モンスターじゃないし…… ええい! やるしかないか! 」
 テオは路地に立てかけてあった棒きれを持って躍り出た!
「何だ! テメェは! 」
「うおおおおぉ!!! 」
 棒切れを振りかぶり、男に向けて振り下ろした!
「ちっ! クソガキがぁ! 」
 女を付き飛ばし、手を振り回すようにして棒を絡め取った!
「きゃっ! 」
 地面に叩きつけられた女は起き上がれない様子だった……
「よぅし…… へっへっへ…… 姉ちゃん、このワルガキを懲らしめてから、可愛がってやるからなぁ…… ペッ! 」
 地面に唾を吐いた男は棒を後ろへ放り投げ、テオの胸倉を掴んだ!
「胸糞ワリィガキだなぁ…… 正義の勇者にでもなったつもりか? それじゃあ、オジサンが悪者か? あのなぁ、このお姉ちゃんが、腐った薬草をオジサンに売りつけたんだよぅ…… オジサンはな、ちゃんとお金も払ったんだ…… 勘違いしちゃダメだぞぅ…… ひっひっひ…… 」
 ギリギリギリ……
「ぐううぅ…… 」
 首を締め上げられたテオは、呻き声を上げる……
「あああぁ…… ぐっ! 」
 このままでは首を、へし折られてしまう……
「あぁあ! お前が悪いんだよぅ! オジサン優しい良い人なのに、子どもをお仕置きしたら、勢い余って殺してしまうよぅ…… 」
「もう限界! 殺してしまうかも知れないけど、火炎魔法を使うわ! 」
 路地から飛び出したマリアは、男を睨みつけた!
 右手を天に向け、振り下ろした!
「フラーマ! 」
 ゴオオォ……!!
 石畳の間から、火柱が立ち上り男に襲いかかる!
「なっ! うわああぁぁ! 魔法使いか! 」
 男はテオを前に突き出し、盾にした!
「ヴェイントス! 」
 向かい側の路地から現れた少年が、耳をつんざく大声で呪文を唱えた!
 火柱は天に向かって跳ね上がり、消えて行った……
「うおおおぉああ!!! 」
 同じ路地から、もう一人少年が物凄い勢いで駆け出した!
 ドカッ!!!
 持っていたこん棒で、男を殴り飛ばした!
「ぎゃああぁ!! 」
 横面を殴られた男は、3メートルほど吹っ飛んで頭から落ちた!
 ドン!!
「あううぅぅ…… 」
 のたうち回って横面を押さえた男は、頬の傷を押さえながら逃げて行った……
「ふう…… 危なかったな…… 」
 魔法を使った少年が、テオを抱き起こした。
「大丈夫かい? 」
「ありがとう。グレッグ! 」
 こん棒を持った少年が、そのままの勢いでマリアの方に駆けて来た……
「マリア!! こんな往来で火炎魔法を使うなんて…… 」
「アルベルト! グレッグも、来てくれて助かったわ…… あのままじゃあ、テオが…… ううう…… ごめんなさい! 」
「とにかく、大事に至らなくて良かった…… アルが気配に気付いて教えてくれたんだ。悪い人でも、人間に対して魔法を使うと重罰になるぞ! 」
 グレッグもマリアを戒めた。
 グレッグと、アルベルトは同い歳くらいの少年だが、才能溢れる戦士だと村中の噂だった。
「げほっ! げほっ! ああ…… 僕も、アルみたいに強くなりたいよ…… 」
「テオ…… ごめんなさい…… 私も、魔法以外にも戦う術を考えないと、今日みたいなときにまた魔法を使ってしまうわね…… 」
「マリアは凄い才能を持っている。さっきの火炎魔法も、恐らくコントロールしてテオを救っていたのだろう…… でも、いちいち魔法だけに頼っていたら、人間同士の戦いには不利だ…… 」
「ねえ、グレッグ、アル! 一緒にパーティ組んでみない? テオも化けネズミの爪をへし折ったのよ! 一緒に戦っても足を引っ張らないと思うわ! 」
「うん! 僕も一緒に戦ってみるよ! お願い! 」
 アルベルトとグレッグは、時々一緒に外へ出てモンスターと戦っている。
 マリアも同行したことがあった。
 強くなるためには、実際にモンスターと戦うのが最も効率的な方法である。
 だが、いつも危険が付きまとう。
 だから突出した実力を持つアルベルトとグレッグは、あまり他の少年少女を連れて行かなかった。
 実際戦闘になったとき、他の戦士を庇ったりしていると、自分も危険に晒されかねないからだ。
「グレッグ…… どう思う? 」
 アルベルトが遠慮がちに聞いた。
「うぅん…… テオは…… ダンジョンに行って来たんだよな…… 」
 グレッグも唸りながら、考え込んでいる。
「テオには、私が戦い方を教えるわ」
「外に出たら、自分の持ち場を命がけで守ってもらわなくてはいけない。途中で投げ出したら全滅する危険がある。それをわかった上で、死んだ気で付いて来ると言うなら…… 」
 グレッグはテオを正面から睨み付ける。
 やはりこの4人の中ではテオの戦闘能力が劣る。
 パーティの弱点になると思っているのが、顔に出ていた。
「なあ、グレッグ! いきなりパーティを組むのは厳しいと思っているのだろう! なら、俺がテオに稽古をつけるから、様子を見てから決めたらどうだ? 」
 アルベルトは明るく言った。
「いや…… 俺もそれを考えたのだけど、それはそれで…… 」
「よし! 決まりだな! テオ! 早速やろう! 」
 アルベルトは先頭をきって教会へと促して行った。
「グレッグ、何か不安なの? 」
「いや。良い案だと思うんだけどな…… アルのシゴキは半端じゃないからな…… 」
「この間に、私たちだけでちょっと外に出てみない? 」
 グレッグとマリアは外の警備を兼ねて、戦闘訓練に出かけた。

 教会の前に、丘へと続く長い石段があった。
「よしっ! この石段を千往復するぞ! 」
 アルベルトは元気いっぱいである……
「えっ? う、うん…… 」
 内心「大袈裟に言ってるだけだよな」と思ってテオは付いて行った。
「はあ! はあ! ふう! ふぅうぅ…… うげええぇぇ!! 」
 テオがまた胃液を吐いた。
「よし! 良く付いて来たな! なかなか見込みがあるぞ! じゃあ、初心者ダンジョンに行ってみよう! 」
「うげっ! ゲホッ! えっ? 」
 テオはまだ足元がふらついていたが、アルベルトに連れられて村の外へと向かった……
「何だアル! もう連れて来たのか? 」
 村の外にいたグレッグとマリアも付いて来た。
「テオは、石段を千往復した。このガッツがあれば、一緒に戦っても危険はないと思うぞ! 」
「うむ…… まあ、初心者ダンジョンなら強すぎる敵は出てこないから、大丈夫だろう…… 」
 グレッグが後衛になり、アルベルトを先頭に、昨日のダンジョンに入って行った。
 昨日は初めてだったので恐る恐るだったが、先頭のアルベルトがズンズン進むので、それに付いてドンドン奥に入って行く……
「ここには化けネズミと大ムカデくらいしかいないから、出たら戦ってみろ! 」
 アルベルトがテオに向かって言う。
「えっ! うん…… 危なくなったら助けてね…… 」
 しばらくして、闇の奥に大きな影が目に入った。
「出たな! テオ! さっき貸した剣で奴の腹を突いてみろ! 」
「うん…… 」
 テオが先頭になり、腰の剣をスラリと抜いた。
「待て! 」
 アルベルトが制した。
「剣はリーチが大事だ。できるだけ相手に剣の長さを見せるな! 」
「そうか。僕は今まで敵を見たらすぐ剣を抜いていた…… それじゃダメなんだね…… 」
「それと、敵に近づいたら、スリ足でゆっくり近づいて、敵が飛び込んで来るのを待つんだ! 自分から動くな! 」
 テオは、言われた通りにした。
 石段千往復のせいで膝が笑っていたし、動こうにもダッシュが効きそうにない。
 剣を鞘に収めたまま敵が近づくのをギリギリまで待った……
 化けネズミは、3メートルほどまで近づくと、立ち上がって爪を広げ、唸り声で威嚇してきた!
 グルルルウウゥ……
「そうか、こうなるから、腹を突くんだな! 」
「まだだ! 待て! 」
 アルベルトの声が響く……
 2メートル……1メートル……
「もう手が届くよ! 」
 テオは恐怖にのけ反った!
「今だ! やれ!!! 」
 アルベルトの気合いが身体に残った力をすべて絞り出させた!
「うおおおおぉぉ!!! 」
 体全体を滑るように前に倒し、そのまま体重を預けて剣を突き出した!
 ブスッ!!!
 意外なほど簡単に腹を捉えた剣が、化けネズミを串刺しにした!
「ギィヤアアァァ!!! 」
 断末魔を上げた化けネズミが、ひっくり返って仰向けに倒れ、動かなくなった……

 村に帰ると、テオはアルベルトに言った。
「石段千往復したのは、僕の足の筋力を奪って、余計な力を抜くためだったんだね! 」
 アルベルトはそっぽを向いて何も言わなかった。
「それと、スリ足でにじり寄ってギリギリまで待つことも、剣を鞘に納めておくことも、腹を突くことも、全部無駄がない指示だった…… モンスターには、それぞれ習性があって、それに合わせた戦い方をしなくちゃいけなかったんだ…… 僕は、今まで自分のことばかりを考えていたよ…… もっと勉強しなくちゃいけないね。情報収集をしてから外に出ることにするよ」
「テオ。アルはすでに大人顔負けの一流の戦士だ。君なら俺たちと一緒にパーティを組んでも危険はないし、きっと俺たちも勉強になる気がするよ」
 グレッグはこの分析力に、素直に感心していた。
「凄いわ。アルの指示があったと言っても、昨日とは別人のような戦いぶりだったよ! テオの才能は、きっと私たちとは違うところにあるんだわ! 」

 その後、テオは旅の冒険者や商人たちから情報を集め、戦略的な戦い方で戦士のタマゴたちを助けた。
「テオの戦略があれば、戦闘能力が倍になる」
 こんな噂が広がり、大人もテオの指示を求めるようになった。
「これが僕の『真の強さ』だ…… 」
 自分のあり方を自覚したテオは、もう迷わなかった。



この物語はフィクションです
この作品は
グラディウス ~天稟の魔道士~
グラディウス ~風の剣術士~
の外伝として執筆しました