「あ、あの。大丈夫です。
ちょっと擦ったぐらいで……あの、それよりも、白杖とバッグを拾って貰えませんか」

「はくじょー?」

なんだそれは。
薄情者っていいたいのか?

落とした物を拾わせるなんて、本当にお嬢様かも。まぁ、俺がぶつかったんだからもちろん拾うけどさ。

わけわからず視線を周囲にやると、白い杖とバッグの中身が散乱していた。


「白い…杖です」

彼女の声は小さく震えていた。
泣かせてしまったかと顔を覗くが、どうにも視線が合わずに首を傾げる。
ずっと、遠くを見ているようだ。目の前の俺と話してるのに、俺を見ていない。

それと同時に、あっと閃いた。


(……この子、目が見えないんだ!)

佐久間《さくま》さんが「この女、しょーがいしゃじゃん?」と耳打ちしてきた。
聞こえたらどうするんだと眉をしかめる。


「わ、荷物ごめんね! 拾うからまってて」

俺は慌てて彼女の荷物をかき集めた。

ポーチに電子カードに、スマホ。ノート、筆記具に病院の薬袋。財布とハンカチを佐久間さんが拾って渡してくれた。

それを、ブランドのトートバッグに詰め込み、彼女に慌てて渡す。白杖を握らせると、彼女はほっと息をついた。