「奏多が脳死判定を受けたのが、事故から三日後。凜ちゃんが移植手術を受けたのは、事故から四日後だ」


哲弥さんが何を言いたいかわかって、わたしは落としていた視線を上げた。

目が合うと、哲弥さんは泣き顔のまま優しく微笑んだ。


「俺が妄想を言えるのはここまでで、正解はわからないよ。
ーーーーでもね、なんていったらいいかわかんないけど、俺はね、凜ちゃんと視線をあわせると、奏多の太陽みたいなあったかさを感じれるんだ」


瞳が、急激に熱を持った。

また風がふいて、溜まっていた涙をふきとばすと、同時にとどまっていた雲も流れて、二人のベンチに陽が差し込んだ。


(この熱は、奏多の熱かもしれない)

確かめるように瞼を触ると、奏多が笑った気がした。



「奏多にも、俺が見えてるかな」

哲弥さんが呟いた。

瞳が溺れるほどの雫が飛んで、クリアになった視界には、世界の鮮やかさが戻る。


「見えているよ」と返すと、哲弥さんはくしゃっと顔を歪めた。

親友の笑顔に、瞳の奥が喜んでいた。