「う、そだぁ。みんなで、わたしをびっくりさせようとして……」

「凜ちゃん」

「あ、ほんとはあなたが奏多なんでしょ? 髪型まで変えて、哲弥さんのふりをしてるんだ」


無理矢理笑った顔は引き攣った。
奏多、と伸ばした手を強く握られた。


「ーーーーわかるだろ。声も、手も、奏多じゃないって」


せっかく見えるようになってきた世界は、水に沈んだかのように揺らめいていた。


「凜ちゃんなら、わかるだろ……!」


そうだ。
奏多の声はもう少しだけ高い。

弾むような喋り方で、手もスケボーのせいかアルバイトのせいか、もう少しだけカサついてゴツゴツしている。

それを思い知ったとき、わたしは絶望した。

視力を失うことより辛いことがあるなんて、思いもしなかった。
この目を元に戻して奏多が戻るなら、すぐにでもそうしたかった。