「メールの相手、全部俺なんだ」

「……え?」

「凜ちゃんが、移植が決まってからのメール、全部俺が奏多のフリして返してた……騙すようなことして、ごめんなさい」


哲弥さんは頭をあげない。
何かを堪えながら、苦しそうに話す。


「どういう、こと……」

「水族館でさ、階段から落ちただろ。……そん時……」

「ーーーー!!」


色んな事が、いっぺんにわかった気がして、声にならない悲鳴をあげながら立ち上がった。
聞いちゃダメだ。

頭の中でずっとストロボをたかれてるみたいに、危険信号が点滅する。


「頭、打ってたんだ……2日後に、意識失って、それで……」

「ーーーーやだ」

あまりに恐ろしい告白に、ひゅーと喉がなった。


「嫌だ!! 聞きたくないっ……!!」


叫ぶと、想像が現実になってしまった気がした。
目も耳もすべてを塞いで、無かったことにしたかった。

「奏多、死んだんだ。こんな大事なこと、隠しててごめん。
お姉さんには伝えたんだけど、手術が落ち着くまで言わないでくれって頼まれて、俺も、それが良いと思ったから協力した」

「ーーーーずっと? うそ。だって、たくさんメールして……」


確かに声は聞いていない。
会えていない。

けれど、死んじゃっただなんて、そんなこと信じられない。