「目が見えなくなった時さ、凜は恥ずかしい、みんなに知られたくないって泣いたの覚えてる?」


ーーーー覚えている。

どこにも行きたくない、もう死んでしまいたいと毎日泣いて、みんなを困らせたんだ。


「凜はまだ小学生だった。
自分より6つも年下の小さな女の子が、人生に絶望してる。そんなとき、わたしは可愛い妹に、何がしてあげられるのかって考えたの。

自分に自信をもって貰いたかった。
堂々と外を歩けるように、自分が恥ずかしいなどと思わないように。

お父さんとお母さんは、自分達が凜の目になってあげようって必死だった。

だからわたしは、女の子なら誰でもやりたいであろう当たり前のことで、凜の力になろうって思った。
わたしが美容部員を目指したのは、凜がきっかけかな」

「お姉ちゃん……」

「おかげで、天職に出会えたかな。人を綺麗にするお手伝いができるってことに喜びを感じるの」

「おねえちゃ……」


耐えきれなくて泣いてしまうと、お姉ちゃんは眉を垂らして微笑んだ。

「ほらほら、あんまり泣いてばかりいちゃダメだよ。目を安静にしてあげなくっちゃ。
暫くは負担をかけないようにって、お医者様に言われてるでしょ」


細く長いゆびが、頭を撫でてくれた。

いつもはその感触を味わうだけだったが、今は薄い貝殻のようにピンクに彩った爪と、光を反射する婚約指輪が見えた。