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夜になると、大学の最寄りの駅前は、スケートボードの練習スポットだ。

そして夜の駅前は、治安がちょっとだけ悪くなる。
夕方、帰宅ラッシュのサラリーマンが溢れる頃から、約束をせずともポツリポツリと集まり、いつしか輪が出来る。

同じ趣味をもつ仲間に会うため、サークルがない週末はいつも遊びに来ていた。

毎週メンツは違くて、その日、その場にいる奴らと適当に遊ぶってのが通例だ。
だから名前しか知らなくて、連絡先を知らないやつもたくさんいる。

その中にはちょっと? いや、かなり? 乱暴な奴もいて、騒いで近所のマンションから煩いって苦情が来たり、BMXっていう自転車競技の練習しているおにーさんたちと喧嘩しちゃったりして、警察に注意されたりすることもある。


奏多(かなた)ぁいいぞー」

「おー!」


レールトリックってやつを絶賛練習中な俺は、前回手首を骨折してやっとくっついたのにも関わらず、また同じ技に挑戦しようとしていた。

一ヶ月のギプスは不便だし臭ぇし辛かったが、そらくらいでへこたれる俺じゃない。


「いっきまぁす!」

床を蹴って板を走らせる。
先週染めたばかりの髪に、ふわっと風が入った。
お気に入りのカラーだ。

大学では苔が生えてるって馬鹿にされたけど、イエローマットだっつうの。
お洒落を知らないやつらめ!