「凜は美人だよ。いつかくるこの日のために、美容部員であるわたしが、お手入れを惜しみなく注いだんだからね」

自信満々に言われ、破顔する。


「お姉ちゃん、ありがとう。お姉ちゃんのおかげで少し自分に自信がついたよ」


お姉ちゃんは想像通り、溌剌とした女性になっていて、今まで声しか知らなかった婚約者の陽生《はるき》さんも、はっきりとした目鼻立ちの好青年だった。

(ああ、お姉ちゃんはこんな素敵な人と結婚するんだ)


結婚前に、わたしの目が生まれ変われたのは良いタイミングだったかもしれない。

わたしが塞ぎ込んだ時も、自棄になっていた時期も、怒ったり見捨てたりせず、ずっとずっと優しく愛情を注いでくれた。

そんなお姉ちゃんに、恩返しをできるように、神様がこのタイミングを選んでくれたのかも。


ありがとうございます。
この目を一生大事にします。
これからは、わたしと一緒に生きて、世界を観てもらえますか。


空へと語りかける。
それは、どこの誰かもわからない提供者への想いだった。