「奏多が反論してくれて嬉しかった……ありがと」

「なんもわかってないのに、分かったような口きいちゃったよな」

「そんなことないよ!
ほんとにごめんね……わたしじゃなかったら、こんな目にあわなかったのに」


嫌味を言われるのは慣れている。
でも、奏多の前で罵られたのは、恥ずかしくて、申し訳なくなって、消えてしまいたかった。

人から疎まれる自分なんて、見られたくなかった。

ーーーーああやっぱり奏多には、わたしなんかよりもっと似合う子がいるんじゃないか。

そんな気にさせられた。


「コラ」

むぎゅっと鼻を摘ままれる。


「“わたしじゃなかったら”とか、そんなこと言うなって。俺は凜がいいの。凜と一緒にいたくて、凜とここに遊びに来たかった。
それは、他の誰にも代わりは出来ないんだからさ」

「だって、わたしこんなだよ。
奏多はわたしを楽しませてくれるけど、わたしは奏多に何もしてあげれないんだよ」


いつまでもこんなマイナスな気持ちをぶつけていたら、それこそ飽きられちゃうかも。

他の人の方がいいんじゃないのと言いながら、嫌われたくないだなんて、なんて矛盾しているんだろう。


「あーあ。ほんと残念」

奏多は大きなため息をついた。
わたしはビクッと体を揺らす。


(ああ、言い過ぎた。フラれちゃう……ーーー)


さらに深い哀しみの中へ潜り込もうとしたとき、

「凜が隣で笑ってくれるだけで、俺がどれだけよろこんでるかわからないんだな」

奏多はわたしの頬を両手で挟むと、瞳にキスをした。