ほんの数秒、触らせて貰ったイルカの肌はつるっとしていて、奏多とわたしは興奮しながらそれを終えた。

触れ合い体験が終わると、そのままイルカショーへとなった。

「観ていく?」と聞かれたので、うんと頷いた。
わたしにとっての“観る”は、その空間を感じること。
司会者の説明や観客の歓声で、十分雰囲気を楽しめる。


「上の方で観よっか。えーっと、ここから階段が30段くらいあるから、真ん中あたりで観ようかな。
床が濡れているところも多いから、気をつけて。左に手摺り、掴まって」


奏多の誘導も慣れたものだ。
今ではわたしも、安心して行く先を預けれる。

ゆっくりゆっくりと上る。
特殊な会場の為か、階段の幅が小さくさらには一段一段が高い。

「もうすこしで、途中の踊り場につくよ」

「うん」


数段先から声が届く。
ちょっと怖く感じる階段だったので、ほっとしながら返事をした。


「ねぇ~前の方座ると、イルカのグッズ貰える時があるって口コミあったから、前に行こう~」

「おー」


踊り場につく直前、前方から、若めのカップルの声とタタタっという足音がした。


ーーーーその時。

どんと肩が押され、後ろにぐらついた。
香水の香り。
人の気配。
すれ違いざまに、ぶつかった。