「海外ドナーを選ぶと早く手術できるんだって。
でもね、保険が使えないから費用が高額になっちゃうの。
家族はみんな、それでいいよなんて言ってくれるけど、お父さんは普通のサラリーマンだし、お姉ちゃんは自分の結婚式の費用を使おうとしてたの。

ずっとずっとわたしにばかりお金がかかってきたのに、そんなわがままなこと言えない。
しかも、治るかどうか、はっきりとわかんないんだよ」


「それで、国内ドナーをずっと待ってるんだ?」

「まぁ、ずっとといっても、移植を試してみようかってなったの、ほんとにここ1年くらいなの」

「そっか……」


奏多の声が暗くなる。
せっかく遊びに来たのに、つまらない話をしてしまったなと思った。


「じゃあ、憧れのイルカさんに会いに行こう。触れ合い体験やってるみたいだよ」

奏多が気分を変えるように、明るくふるまった。


「触れるの? すごい! 生きたい!」


奏多は手を繋ぐと、こっちだよと引き寄せた。
わたしは二人で楽しみたくて、子供のようにはしゃいだ。