水族館では二手にわかれ、別行動を取ることになった。
お昼にまた合流しようと約束をして、わたしは奏多と水槽をゆっくりとまわった。

水槽に囲まれた室内は、反響したりしてなんとも不思議な音の世界となる。


「ここはなんの水槽?」

「ちんあなごだって」

「穴子?」

「土からちいさいミミズみたいなのが顔を出して揺らめいてる。可愛いよ」

「へえー。水槽がすごく静かだったから、なんだろって思ったの」

「水槽の音がわかるの?」

「水槽の音はわからないけれど、なんとなくだよ。泡のコポコポって感じとか、水の流れる速さとかが、静かだなぁって思ったから」

「すごいね、超能力みたい」

「本当にあてずっぽうなの。実際は何もわからないよ。もっとさ、イルカみたいに超音波でモノとの距離を測れたら、目なんか見えなくても一人でどこへでもいけるのにね」

「あ、俺それ知ってる。エコロケーションってやつだ。跳ね返ってきた超音波で、形とか大きさがわかるやつだろ」

「そう、それ。憧れてるの」

「早く移植してさ、また見えるようになるといいなぁ……って思うのも複雑だな」


脳死か亡くなった人からしか移植できないため、複雑な気持ちにはなる。
“待っていて”いいのか。
そんなことを望んでいいのか。