「可愛い。めっちゃ似合ってる」

「ーーーーな!」

わたしは今いったいどんな顔しているんだ。
奏多の視線を感じる。
奏多ばかりずるい。


「凜かわいい。ねぇ、俺……」

奏多が何か言いかけたところで、遠くから哲弥さんと奈子さんの声がした。

バタバタと足音が近づいてくる。
奏多は腕をすっと緩めた。


「凜ちゃん! 目が覚めたんだよかったあ!」

「哲弥さん、奈子さん…! ごめんなさい心配かけちゃって……」

直ぐ横で、ガサガサとビニール袋が鳴る。

「具合どう? 気持ち悪くない? 貧血に良さそうなの飲み物とか買ってきたよ。
栄養ドリンクに鉄分ヨーグルトに、鉄分グミ! チョコレートにしじみ汁に……」

「ちょっと待て、しじみ汁をここで飲むのはしんどくないか。どうやって飲むんだよ」

「えー売店のおばさんに事情話したら、お湯くれるっていったもん」

「さっきハンバーガー食べたばっかじゃん」

「これは栄養補給として……!」


随分と買い込んでくれたらしい。
買い物袋をのぞき込みながら話す奏多の横で、こっそりとバクバクと煩い胸を撫でた。


いったい、何を言おうとしていたのだろう。

顔が熱くて堪らない。
離れてしまった熱を、寂しく感じた。
もっと触れていたい。
そんな風に感じたのは初めてだった。