「ええと、わたし……」

やっぱり状況が読めない。

「凜、恐怖の館でた途端、倒れたんだよ」

「ーーーーあ……」

(そうだ)

耳に集中する癖がついていたせいなのか、ただホラーが苦手なだけだったのか、とにかくアトラクションは辛かった。

必死に耐えてやっと終わるころには、具合が悪くなっていて、なんとか外にでたと思ったところで、全身の血がスウッとさがるのを感じた。

つまり貧血だ。

「ごめん、貧血……」と込み上げる吐き気を抑えながら、なんとか伝えたまでは覚えている。


「顔も真っ白だし手は震えてるし、凜は自分で貧血言ってたけど、病気のこともあるから、もう少し目を覚まさなかったら医務室連れて行こうって話してたんだ」

「ごめんね……わたしどのくらい寝てた?」

「そんなに長くないよ。今、哲弥と奈子ちゃんが売店に行ってくれてる」

「ありがとう。迷惑かけちゃってごめんね……」

「迷惑なんかじゃないよ! ああ、でもマジでびびった。ちょっと、ぎゅってさせて」

肩に伸びてきた手が、ぐっと体を引き寄せる。

パリッとしたシャツ。
お日様の匂いのティーシャツ。
ごつい腕時計が背中にあたり、逞しい腕と、頬に胸板を感じる。
耳にふわりとかさったのは、奏多の髪の毛だろうか。

動揺せずにはいられない情報の数々に、わたしは目を回した。