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「凜……」

泣きそうな奏多の声が空から降ってきた。
いつも太陽のようなのに、いったいどうしたの。


可哀想に。
なにがそんなに悲しいの。
わたしが慰めてあげるよ。


そんなことを思いながら瞼をあけると、微かな光を感じた。光はさわさわと揺れる。
木陰から、空を眺めるときの感覚に似ていた。

状況がわからずぼーっとした。
手が暖かいと思ったのは、握ってくれている人がいるからだ。


(ーーーーあ、奏多の手だ)


「っあ、凜……凜?! やっと目ぇ覚ましたっ……大丈夫か?」

(目を……?)


奏多の言っていることが理解出来ない。
ここはどこだろう。
わたしは……寝ている?
周囲を手で探ると硬い木の感触がした。


(ベンチ……?)

そういえば、恐怖の館で……そこまで考えてはっと起き上がる。


「あ、凜……いてぇっ!」

「いっっっ!!」

おでこの真ん中がガチンと鳴って、頭をクラクラとさせる。


「んお~いってええええ」

奏多の手がパッと離れて、互いに足をバタつかせた。



「凜~。いきなり起きあがるなって~……」

「……ご、ごめんね、どこぶつかった?」

「顎ぉ」

奏多は呻く。


「ご、ごめん大丈夫……?」

手を伸ばすが奏多に届かない。


「ここだって」

奏多がわたしの手を掴み誘導した。
手のひらがぴとりと頬につく。


「……ほっぺたな気がするんだけど」

「顔にはかわらないだろ」


奏多の頬が不服そうに膨らんだ。