「わたしこう言うの大好き!」

「でたよ奈子のホラーマニア」

「えっ奈子さん好きなの?」

「好きなんてもんじゃないよ、俺は苦手なのに、いつも一緒にスプラッター映画見させられるんだよ」

哲弥さんが辟易としている。


「絶叫系もホラーもさ、女の子の方が強かったりするよな。哲弥はまた白目むくんじゃねーのぉ」

「馬鹿言うな」

並んで待っている途中に、奏多が「視覚障害ある人って耳が良いって聞いたけど、凜もいいの?」と聞いてきた。


「うん。鍛えられてるかも。けっこう小さな声も聞こえるよ。数メートル先のヒソヒソとか」

「えっマジ? すげえ。
じゃあさ、めちゃくちゃ怖く感じるかもな。立体音響なんだって。椅子から風とか水が出てきて、少しガタガタ動くらしいよ」


耳元で響く怖い音? 

どんなものかわからずに、とりあえず体験してみようと思っていたが、普段から驚くことが多いから、びっくりするのは好きではない。

もし苦手だったらどうしようと、ソワソワとしながら順番を待った。