車通りの激しい道路。信号の無い交差点。
歩道の狭い道。
駅のホーム、階段、電車。



移動は緊張しとても大変だ。耳と足と周りの空気すべてに注意を払いながら進む。

ひたすら忍びのように意識を集中するのは疲れてしまい、頭が痛くなることもあった。



百貨店から駅までを、ゆっくりと噛みしめるように歩く。途中にある階段は、すぐ脇のスロープを使うようにしていた。


いつも通りの、いつものルート。

必ず同じ場所を通れば、そうそう怖くない。

しかし、いつも使うスロープからは、いつもは聞こえない音がした。