世の中の大半の人が見えているのが当たり前で、それを前提に会話をする。

だから“見て”というのは日常に使う言葉であって、いきなり使わないように会話をするなんて難しいんだ。

だから、今日みたいなことはしょっちゅうあるけれど、それは気遣いが出来ないわけでもなく、ましてや失言でもなんでもない。

寂しくならないと言ったら嘘になるけれど、普通の会話をしただけなんだから、悪いと思わないでほしい。
むしろ、しまった、と思われる方が健常者との線引きをされているようで、切ないかもしれない。


「凜……」


奏多のテンションがかくっと下がった。

謝られるのかなって思った。

大丈夫だよ。そんなのいいんだよっていいたいけれど、余計に気にしちゃうかな。
彼らの雰囲気を壊さないためには、わたしはどんな風に伝えたら良いだろう。


わたしはとても楽しい。
まだ笑っていたい。
もっと、みんなで遊びたい。
気にしてない。


そんな風に考えていると、落ち着いたトーンのまま、奏多は説明をしだした。


「えっと、写真ね、想像できるかな。
四人で映ってる。
たぶん、撮影ポイントは2回目に落ちてくところで、みんな髪の毛は逆立ってぼさぼさ。
俺はなんか思い切り叫んでて、凜はめっちゃ笑ってて、奈子ちゃんは頭を下げてちっちゃくなってる。んで、哲弥が白目剝いてる」


三人の顔も、ましてや自分の顔も知らないけれど、奏多の説明は体にすっと入って脳内で再生された。

それは、ごめんって言われるよりも、ずっと優しくて嬉しい言葉だった。
あったかい声がじわりじわりと胸に落ちる。

ああ、奏多はお姉ちゃんが言ったとおり、本当に太陽みたいな人だ。