大きな駅のロータリーは、歩道が整備され歩きやすい。古いところだと、インターロッキングのブロックが浮いてたり欠けてたりして、転びそうになることがしばしばあった。

白杖を振り、靴底の薄い平らなバレエシューズでゆっくりと点字ブロックをなぞりながら歩く。


『目が見えなくとも、お洒落を楽しもう』

6個年の離れた姉、(みお)は百貨店に店舗を構えるブランドコスメショップの店員で、美容部員を務める。

お姉ちゃんはずっと、わたしが病気で10歳の時に失明してから、出掛けるときは服を選び髪を結い、化粧を施して全身をコーディネートしてくれる。

わたしは自分がどんな顔をして、どんな服を着ているかもわからないけれど、着飾っては可愛いと褒めてくれるお姉ちゃんのおかげで、外も気持ちよく歩けている。

でも、もうあれから10年だ。
わたしも20歳になった。

いい加減に甘えるのも止めなくてはならないし、お姉ちゃんは26歳で、半年後には3年付き合った彼と結婚を控えている。

わたしのことを気にして、ギリギリまで実家にいるのだと言ってくれるが、わたしの事など気にせずに、彼と過ごして欲しいと思っている。

16歳。高校生だった頃の顔までしか知らないが、あの頃も美人で気さくで、友達の多い自慢の姉だった。今はもっともっと、大人の魅力のある女性になっているのだろう。

検診のため、月1回、電車で大きな駅まで出てくると、お姉ちゃんのショップにより、新しいコスメを買うのがルーティンだった。