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午前中の講義が終わり食堂でお昼を食べていると、哲弥《てつや》が数量限定の日替わりランチをトレーに乗せて近づいてきた。
隣の椅子を引いて座る。

付き合いは大学からとそう長くはないが、とても気が合って、授業もサークルも殆ど一緒にいる親友だ。

「奏多、また300円の具なしラーメン食べてんの」

「金欠なんだって」

カツサンドにポテトにサラダにアイスコーヒーのセットは羨ましくて仕方が無い。
横目に見ながら味の薄い麺をずるっとすすった。

「ああ、お金盗まれちゃったやつ。
解決した? 毎日駅前で待ってるとか、よくやるよなぁ」

「俺は義理人情に熱い男なの。謝んなくちゃだし、ちゃんと返さなくちゃだろ。
先週末、やっと会えてさ」

「え、マジ?」

「うん。なんか、月1回しか駅には来ないんだって。前回合ったときも通院だったらしくて。
謝って、お金も返してとりあえず解決した。んで、連絡先交換してもらってさ」

「おー、よかったじゃん。どんなこ? 写真とかないの?」

「ないよ。いきなり写真撮らせてとか、ふつーいわねーだろ」

「だって、奏多が夢中だから、もしかして好みの子だったのかなって」

「…………」

下心がゼロなわけではない。
図星なのを誤魔化すように、残りの麺を掻き込むとスープをぐびっと飲んだ。
それだけでは満腹にならなくて、哲弥のポテトを数本盗む。

「あ、やっぱりそうなんだ」

哲弥は俺の手を叩きながら言った。