「ごめん。デリカシーなかった。
悪い意味じゃなくて、なんもわかんないから純粋な興味で……傷つけてごめんなさい」

掴んでいた手が離れる。

謝られても興奮はおさまらなかった。
でも、もうどうでもよかった。

勝手に期待して、勝手にがっかりしただけだ。

「ーーーーいいの。突然騒いでこちらこそごめんなさい」

それだけを伝えて。
もう帰ろうとした。
やっぱり、健常者といても傷つくばかりだ。

「お金、返してくれてありがとう」

鞄にしまい、駅へ向かおうとすると、白杖を掴まれた。体をビクッとさせる。

「……ねぇ!  白杖を掴まれるのが一番怖いの!!」

「……知ってる。それもネットで見た」

「じゃあ、なんで……」

「まだ、帰って欲しくなくて……俺、凜と仲良くなりたいんだ」

「……は……な、なんでわたしなんかと……」

「友達になるのに、理由なんかいらないでしょ。
凜のこともっと知りたい。
俺、怒らせちゃうことたくさんあると思うんだけど、わかってないことあったら今みたいに教えてよ。ね?」

「友達……?」

「うん。お願いします」

両手をにぎにぎと揉まれて、また心臓が変になった。
怒ったり泣いたりドキドキしたり、今日のわたしはめまぐるしい。

こんな風に、突然友達が増えるのは初めてだった。