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失明してから盲学校へ通い、高校は整体師の資格を取った。
今では週四回か五回、アルバイトで整体のお店へ通っている。


(りん)ちゃんは細いのに、力強くていいねぇ」

定期的に通ってくれるおばさんの背中をぐっと押すと、気持ちよさそうな声を出した。


(みお)ちゃん、結婚するんだって?」

「そうなんです。少しずつ準備してますよ」

「いいわねぇ。近所でも評判の美人姉妹が、とうとう結婚なのね。
凜ちゃんも病気は大変だったけど、こうして立派に働いてるし、おばさん、澪ちゃんも凜ちゃんも小さいときから知ってるから、なんだか感慨深いわぁ」

「ありがとうございます」

「凜ちゃんは、いい人いないの?」

「いえいえ、わたしが恋愛だなんて。憧れはしますけどね」

「あらあ! 凜ちゃんはとっっても美人よ! もっと自信を持ってほしいわ」

「服も化粧も姉頼みなんです。そろそろ卒業しないといけませんね」

「ほんと、できたお姉ちゃんよねぇ……」

「右の肩甲骨が強ばってますね」

「あ、そうなの。また腕をあげると痛くなってきちゃって……」


世間話を交わしながら、処置を施してゆく。



(恋愛かぁ……)

正直、自分の好きな会社に就職をし素敵な男性と出会い結婚するというお姉ちゃんを羨ましく思っていた。

憧れた男性は、小学生の時に読んでいた少女漫画のヒーローでとまっている。

狭い世界ゆえに、出会いがないのも大きな要因ではあるが、一番の原因は、目の見えない自分なんかと付き合っても、相手は楽しくないだろうと引き気味になってしまっていることだ。