無事に改札まで送って別れたけれど、彼女は頑なだった。
名前も連絡先も教えてくれない。


しつこく聞いていたら、駅員にナンパかと思われて注意されて急いでその場を離れたのだった。

とぼとぼとみんなのところへ帰ると、みんなはさっきの事など忘れて練習を始めていた。


「奏多帰ってきた」

「どうだったー? 連絡先ゲットできた?」

揶揄われて、すこしくらい労いの言葉はないのかとムッとした。


「できねーよ! みんなしてうっせぇよ」

「なー、見ろよこれ」


佐久間さんが肩を組んで目の前に掲げたのはお金だった。
三万円。大金じゃないか。


「なんすか、これ」

「さっきゲットしたんだよ。もう練習止めて、今日はこれで飲みいこうぜ」

「ゲット……? どういう……」

そこで、さっき彼女の財布を拾ったのは佐久間さんだと思いだす。


「ーーーーまさか……!!」

驚くと、佐久間さんはまたいやらしい笑みを浮かべた。