夏に近づいて僕は少しメンタルが脆くなっていた。
 風邪をひいているわけではないが、1週間以上学校を休んでいた。
 というか、避けていたのかしれない。

 パジャマで毎日過ごしていた。
 勉強もろくにせずテレビやゲームばかりでごろごろしている。
 それでも学校に行かなきゃなあとはなんとなく感じていた。

 けど、だるいなぁていうのが本音。

 日曜日になって、家族はみんな外出しており、家には僕一人だけになった。

 部屋でゲームをピコピコしているとインターホンが鳴った。

「はい?」
「あ、あの……同じクラスの鮫島です」

 僕が出るとマンションの一階に来ていたのは、クラスでも真面目で通っている委員長、鮫島さんだった。
 鮫島さんは成績優秀で、先生からも人気だった。
 自分から積極的に行動する人ではないのだけど、人に頼まれると喜んで助けるタイプ。
 制服もキッチリ着こなすし、話し方も上品。
 どこかおとなしい感じで、話すときも優しいけど小さな声で喋る女の子らしい子だった。

 それにしてもなんで鮫島さんが僕の家に?
 今の班では確かに同じグループなのだけど、彼女とはそんなに話したこともない。
 せいぜいが行事とかで必要なときに話すぐらいだ。
 
「鮫島さん? どうしたの?」
「うん、ちょっと近くに寄ったから」
 
 僕はとりあえず、一階の自動ドアを開けて、彼女がエレベーターであがってくるのを待った。
 ひょっとして、僕が連日学校を休んでいるから、先生に言われて委員長として、登校刺激でもするつもりなんじゃないかな……。
 やめてほしい。
 正直会いたくないなぁと思っていた。

 再びチャイムが鳴り、彼女が自宅前のドアまでたどり着いたことが知らさせる。
「ハァ……」
 ため息交じりにドアノブを開く。
 強い風と共に現れたのは、タンクトップにかなり丈の短いショートパンツ、それにミュールをはいた少女。
 僕は一瞬、目を疑った。
 その子があのクラスでおとなしくて真面目なスカート丈の鮫島さんって思いもしもなかった。

「あの、童貞くん。いきなり来てごめんね」
「い、いや別にいいけど」
 僕は目のやり場にこまった。
 こんなに露出度の高い同年代の子に会うのは初めてだったからだ。

「これ、この前パパたちと長崎に行ったの。だからよかったらご家族と食べて」
 鮫島さんは優しい声で僕にカステラをくれた。
 僕は学校で何度も鮫島さんの姿を目にしていたが、ハッキリいって地味な子という印象が強かった。
 しかし、今日の彼女ときたらどうだ?

 プライベードでは私服はこんなにもギャルギャルしいのか?
 とんだおビッチさんではないのか……いや、待てよ。

 アポなしでわざわざ僕の家におみやげを持ってきただと?
 しかもこんな露出度の高いファッションで。
 つまり僕が気になって仕方ないから、おみやげをパパさんに頼んでうちに来る口実を作ったんだ!?

 この子、僕に惚れているかもしれない!