駅近だけどボロくてせまいアパートの1階
就職を機に念願の一人暮らし

会社まで電車で30分、だから駅近じゃないと不便なのだ
帰りに花瓶を買って帰り部屋に入るとすぐに飾った

花束なんてプレゼントしてもらったの初めてだ
部屋着に着替えて敷きっぱなしの布団に横になる

そして将真の連絡先を消した

結璃菜は小さい時に母親を亡くしており父子家庭だった
けど父親は夜の仕事だった為ほとんど会わない

小さい頃は祖父母の家で夜は預かってもらっていた記憶はあるがいつからか自分の事は自分でするようになっていたし、たまに会う父親にも大丈夫よなんて強がりを言って甘えることはしなかった

初めての彼氏は高校の時、あの頃は何をするにも楽しかったけど何故か振られた

そして将真と付き合いだしても結局振られた
別にケンカをしたわけでもないのに……

何がいけないんだろ
字が汚くてギャップがあると高校の友達に言われた事もある

私はよくクール美人と言われるが自分ではそう思わないし目つきは鋭いから好きではない
男の人って可愛いのが好きだよね……

それに小鳥遊結璃菜なんてめちゃくちゃ多い画数の名前を書くのが昔から嫌だった

パソコンではすぐ出るしそこまで仕事に影響はないだろうと思ったが就活の履歴書ではやっぱり言われる会社もあった

秘書検定を持っていたから今の会社には有利だったが上司からは注意はされる

結璃菜は名刺を鞄から出した
まさかねこんな人に教えてもらえるなんてね

お金も貯めたかったし習いにいくのも受講料高いしなと思っていたからほんとに結城さんには感謝しかない

昔から家にはお金がないと幼心に気づいていたから節約料理もしてきたし、いつかベッドで寝れる部屋に引っ越すぞと最初のボーナスも使わずに貯金した

結城さんはいつもあんな暮らしをしてるのかな
「いいな……」と本音が漏れてしまった

横になっていると寝てしまっていた
電話の音で目が覚める
結城さんだ

「もしもし」
「結璃菜?」
「あっ、お疲れ様です」
「今やっと家に帰ってきたよ」
「うん」

「師匠に来週つれてくるからって言っといた」
「はい……どんな服装がいい?といってもブランド品なんかは持ってないけど」

「そうだなワンピースとかでいいと思う」
「わかった」

「住所教えてくれないと土曜日行けないけど?」
「ごめんなさい……寝てました」

「だろうなと思ってた(笑)」
「あの、私の家は凄い狭くてボロいアパートだからどこかの方がいいと思うんだけど……」

「小さいテーブルがあれば十分だよ、それに場所借りたら無料の意味が無い」

あっ、そうか……お金かからないようにしてくれたから
「ホントに汚いし狭いよ?」

「うん全然大丈夫」
「じゃあ……住所を送るね」

「うん、よろしく」
電話を切ると急いで住所を送信して部屋を見渡した

そういえば将真にも古いなと言われ一度しか来なかったな

明日は大掃除だ!