それから私は1人でこのホテルに食事に来た
予約はしてなかったけど将真と来ようと調べていた店だった

まずはビールを頼み料理を平らげて店を出ると
上の階にBARがあるのを見つける
そして1人でカウンターに座りマスターと話していたんだ

甘いカクテルはどんどん進み途中からきた男性とマスターと話したのを思い出してきた

「カウンターに座ったのが結城さんですか?」
「そうだよ、かなり呑んだとマスターから聞いたよ」

「甘くて美味しかったなぁ」
「それで俺にお持ち帰りされたんだろ?」
「あっ……」

「でも一応言っとくけどちゃんと会話もしてるからな、マスターも聞いてるし俺は住所も聞いてタクシーにのせるつもりだったんだぞ」
「はい」

「そうしたら住所は何て言ってるかわからないし、メモしてもらったのに何て書いてあるのか読めないし」

フルーツに手を伸ばしていたところだった

「……私、字が汚くて会社でもよく注意されるんです」

「いくら汚くても丁寧に書けば大抵は読めるもんだ、まあ、その事も話してた」
「習いに行くか、通信教育しようと思っていて」

「それで俺が無料で教えるから俺の頼みも聞いて欲しくて結璃菜に名刺を渡したんだけどな」
「えっ、無料で?」

「やっぱり覚えてないか」

軽くため息をつかれた

「書道家さんに無料で教えて貰えるなんてめっちゃ素晴らしいことじゃないですかー、何でもしますよ」

結璃菜は嬉しそうに笑った

「初めて会ってHまでして信用していいの?俺の事」

「朝はどうしようと思いましたけど……
結城さん優しいですしちゃんと名刺渡してくれたって事は身分も隠してないし、それも1つの出会いだと思います」

「そうかな?」
「マスターとも仲良さげだったので変な人ならこんなちゃんとしたホテルで仕事出来ないですよね、結城さんも軽い人なら普通はラブホテルでヤり逃げってとこでしょう?」

「まあ……そうだな」
「結城さんの頼みとは?」

「まず、結璃菜を教えるにあたって上達ぶりを動画でSNS発信をしたい」
「全然OKです」

「顔は出さないから……書道教室を広める為のものとしてって事」
「はい」

「もう1つ……」
「……どうぞ?」

「言いにくいんだが俺の婚約者になって欲しい……
フリでいいんだが」
「彼女のフリじゃなくて婚約者?」

「あぁ」
「いつまでですか?」

「実は昨日の結璃菜を見て思いついたからまだ具体的にどうするかは考えてなくて……」
「どういう事ですか?」