坂本さんは楓くんの彼女が私って事が気に入らないのかなぁ

それとも楓くんの事が好きなのかなぁ

考えながら眠りについた

あっという間に飲み会の金曜日がやってきた
全部で8人、ひまりに紹介してもらったお店はまだ新しく広かった

店員さん曰く国内の日本酒を売りにしてると聞いてみんなが日本酒を頼んでいく

「小鳥遊も日本酒飲めよ」
上司に注がれる

「私はビールで……」
「小鳥遊さんはずっとビール派ですか?」

坂本さんが隣にいつの間にか来ていた
「坂本さんは強いの?」

「まあ、人並みだと思います」
「私は最初に酔ってからあまり呑まないようにしているんです」

チェイサーの水を飲んだ
「まだ1次会ですよ?呑みましょう」

坂本さんに日本酒を注がれていく
「……楓丸くんはお酒が強いから付き合って呑んでるのかと」

「それが楓くんに呑んじゃだめって言われていて……」
「そうなんですね、酒癖が悪いんでしょうね」

ニヤっと微笑む彼女が怖い
「多分?」

と返事をしてチビチビと日本酒を口にする

「入社した会社名を師匠に話したら蒼雲の婚約者と同じだと聞いた私の気持ちわかります?」
「わからないです」

「美人な人と素直に思いましたよ」
「ありがとうございます」

「でも……字を見て引きました」
「……よく言われますぅ」

「楓丸くんの字は本当に勢いがあって講演もパフォーマンスも凄い人気なんですよ
婚約者の貴方は知ってますか?」

「知らないですけどーー
楓くんの仕事は徐々に理解していきますよ
坂本さんの年数と実績には敵わないですけど楓くんもゆっくりでいいって言ってくれるし……蒼雲じゃない楓くんの素を私は大事にしていきたいんです」

ドンと日本酒のコップをテーブルに置く

「私だって蒼雲と楓丸くんはそれなりに分けて接してます」
「じ、じゃあ……楓くんの携帯の色は知ってますか?」

「色?黒でしょ」
「ブッブー残念……坂本さんはあくまでも結城流派の一員なんです」

「せ、先週の出張は同行して楓丸くんの助けにはなったつもりよ」

お猪口を坂本さんの前に出すと注いでくれた
「私は楓くんの特別なんれす……」

ポケットから携帯を出した
「これは内緒れす……坂本さんだけですよ」

だいぶろれつが回らなくなっている結璃菜は楓くんのLINEを出した

「楓くんのLINEは誰もが持っている訳じゃありません、プライベートLINEでしゅ」

名前に楓丸と書いてあるLINEを見せた
「……持ってるわよ」
「あれ?」

坂本さんのLINEにも楓丸とあった
「なんれ?」

「小学生の5年生の時にお迎えに来てもらうために親から携帯をもたされていたのよ
もう夜の教室時間だったから……その時は楓丸くんは中学生で携帯持っていたし普通に交換してるわよ
バカね(笑)カバーなんか傷んだら変えるし」

「そうれすか……参りました」
「坂本〜、小鳥遊大丈夫そうか?」

「はい、何かチビチビ呑んでます」
「呑んでましゅ」

坂本さんはずっと私の隣から席を立とうとしない

「展覧会の時に振袖着てて順子ママが認めたのかなって思ったのは悔しかったわよ
小さい頃から樹里が支えるんだって思ってたし、順子ママからも言われてたから」

順子ママってお母さんのことかな?

“順子ママって? ”
“ 日本酒のんでる”
“ 会いたいなぁ♡”

無意識に楓くんにLINEを送っていた

「ちょっと、楓丸くんは夜の教室の時間でしょ、何LINEしてんのよ」

「あー、そうだった〜削除削除」

「邪魔しちゃだめじゃん」
「坂本さんは楓くんの事が好きなんですか?」

「それは……ただ楓丸くんの婚約者として何も知らない小鳥遊さんは合わないって」

「それは楓くんが決めることでしゅ……順子ママでもおじいさんでもありましぇん」

坂本さんの手に握られたコップはプルプルと震え出した
「もう、酔っ払いは相手にしません!」

やっと席から離れていった

1次会も終わり坂本さんが会計をして結璃菜は先輩に手を引っ張られていた