2人はチェックアウトをして車で楓丸の家に向かった
家の前には生徒や保護者のお迎えの車が停めれる駐車場があった

今日はここに停めると言って車から降りる
大きな門をくぐると立派な庭があり家と母屋があった

書道教室は母屋でやっていると聞いた
家の方の玄関を開ける

「ただいま」
「お邪魔します」

廊下からスリッパの音がした
「いらっしゃい」
「初めまして」

迎えてくれたのはお父さんだと紹介された
丸い顔でニコニコ迎えてくれた

優しさが顔に出ているといった感じだ

「じいちゃんは?」
「部屋にいるよ」

「先にじいちゃんとこに行ってくる」
「わかった」

長い木の廊下を歩く
「1番奥の部屋がじいちゃんの部屋なんだ」

外から声をかける
「じいちゃん、開けるよ」

襖を開けると座椅子に座っているおじいさんがいた

「楓丸か、また家に帰ってこなかったな」
「またって先週は仕事だったじゃん」

「そうじゃったかの」

おじいさんの前に楓くんと正座をする

「じいちゃん、婚約者を連れてきたよ
小鳥遊結璃菜(たかなしゆりな)さん」

だいぶ耳も遠くなってきている様子で
楓くんは膝を立てて耳に近いところでゆっくり私の名前を伝えてくれた

「初めまして、小鳥遊結璃菜です」
「美人さんじゃ」

「いえ……」
「歳は幾つじゃ?」

「21歳です」
「若いの〜学生か?あっもしかしてデキ婚するんか?」

デキ婚て……ちゃんと言葉知ってる〜とおかしくなった

「じいちゃん、俺を何だと……失礼だな」
「蒼雲がモテるって弟子がいつも言うとる」

「彼女は短大を出て今年から社会人だよ」
「石山商事に勤めてます」

「結婚すると蒼雲は出ていくんじゃろが」
「まだ具体的には決めてないよ、じいちゃんが会わせろってうるさいからさ」

「心配で死ねんのじゃ、お前は特別だ……」