しかしその時、車道は赤だったはずなのに、トラックが止まろうとしなかった。いや、正しく言うと、止まれなかったんだろう。昨日の大雪で、硝子のような氷が地面に出来てしまっていたから。
そのままトラックは、止まる気配が少しもなく、私たちの方へと迫ってきた。
お母さんは私を庇おうと、瞬時に思い切り、力強く抱きしめてくれた。お母さんの腕の中に抱きしめられた私は、腕の隙間からお父さんを探した。
お父さんは、私たちと一緒に信号待ちをしていた男の子を庇っていた…。その時、私の心の中には、とても酷い思いが浮かんでしまった。
どうして？どうして私よりも、赤の他人の子供を優先するの…？
そう思った瞬間、お母さんの身体に当たった衝撃が私にも届いてきた。カラン、と音が鳴った。そこには、お父さんに買ってもらった水色の硝子がついているネックレスが転がっていた。首にかける部分の紐が切れていて、私達の関係を引き裂く事を表しているようだった。
そう思った瞬間、赤く染っていく道路で私の意識は途絶えた。