儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

申し訳なく思ったものの、笑顔で愁の所へ行かないと心配させてしまうので、フーと深呼吸してからベンチへと身体を移動させた。
「愁、おまたせ」
「あ、夏海、お疲れ様〜」
相変わらず愁は優しい。この優しさにずっと浸っていたいと思ってしまうけど、それは彼の負担にもなってしまうだろう。私も成長しなくては。
「そういえば、夏海は来週退院だっけ…」
「…うん!」
愁にとって、退院と言う言葉はどれだけ辛いだろう。自分だけが、病院に取り残されるような気分になってしまうのかな…。
「悲しくなるね…」
愁が私との別れを悲しいと思ってくれていた事を知って、嬉しくなってしまった。その分、自分だけが未来へ走り出してしまう感じが、少し悲しかったし、寂しかった。
「…退院しても、記憶はまだ戻らないんだ。それに、退院しても、いつでも愁に会いに来るから、ひとりじゃないよ」
いつでも、なんて嘘になってしまうかもしれない。でも、悲しそうな彼の顔を見たらそう言わざるをえなかった。せめて今だけは、安心させたいと思った。