ずっと、愁が言っていた『幸せを奪った』って言葉が、気になっていた。私達は今年の夏、初めて会ったのに、まるで昔に愁が私から幸せを奪ったような言い方をしていた。
もしかしてあの日、一緒に横断歩道を渡っていたのが愁なの…?私のお父さんがあなたを守ったから、自分のせいで死んだと思っているの…?
もしそうなら、絶対彼に会って話したい。
お父さんの死はあなたのせいじゃない。
お父さんがあの日、あなたを助けていなかったら、私はあなたと出会う事すら出来なかった。出会って、共に過ごす時間すら存在しなかった。それでも、愁は自分のせいで私のお父さんを死なせちゃったって、思うの…?
その瞬間体中に強い衝撃を受け、体が空中に飛び、地面に突きつけられた。
お父さんとお母さんは、この痛さを耐えながら私達を守ってくれてたんだね。
意識が少しずつ遠のいていく。通行人が悲鳴をあげたり、冷静な人は救急車呼んで下さいとか、私の意識を確認しようとしてくれているけど、体が思うように動かない。地面が、赤に染まっていく。そのまま、私の意識は途絶えた。