いや、間に合うかなじゃない。間に合わなければいけないのだ。愁に何があったのか、どうして私から離れなければいけないのか、ちゃんと話を聞いてあげたい。その苦しみを、一緒に背負いたい。
愁、愁、どこ…？どこに行ったの…？
さっきまで見えていた背中が、もう永遠に見られない気がした。もう、手の届かない場所に行ってしまうような気がした。
そんなのは嫌だ、私は絶対諦めない。絶対、愁の元へ行くんだ。彼をこれ以上、悲しませたくない、1人にしたくない…。
その時、森をあと少しで出る距離にいた私は、雨でぬかった土のせいで足を捻ってしまい、倒れ込むように地面に頭を打ってしまった。
目眩がするけど、彼の辛さに比べれば大丈夫。彼は昔、辛さは人それぞれだから、比べなくいいって言ってくれたけど、今だけは比べさせてね、それが私の強さになるから。
足を引きずりながら、視界が揺れながら、それでも私は1歩1歩前に進んだ。そうすれば、いつかまた彼に会える。また、あの笑顔を見ることが出来る。