彼になら、自分のありのままの気持ちを伝える事が出来た。
「夏海の気持ち、言ってくれてありがとう。なんか不思議だなぁ」
そう言って彼はクスリと笑った。
何が不思議なのか分からなかった。私、何か変な事言っちゃったかな…。この考えは、一瞬で煙のように消えた。だって、彼があんまりにもスッキリしたような顔をしていたから。
「な、何が不思議なの?」
「あはは、ごめん、夏海に話したらなんでもスッキリするというか、なんか元気出てくるんだ」
病気なんて嘘のような笑いだった。
私が、彼を笑顔にしてるのかな…。
私が、彼の心の支えになってるのかな…。
「私もまだ、愁に秘密にしていた事があるの…」
この事を伝えるのはもっと先でもいいと思っていた。でも、今しかない。彼が勇気をだして言ってくれたんだから、私もそれに応えたい。
「うん、そっか…。無理しなくて大丈夫だからね」
彼は秘密にしていた事を怒らずに、私の話を聞いてくれた。両親の死で変わってしまった私が、いじめられていること。
愁はうんうんって言いながら慰めてくれた。「そっか…。辛かったね…。夏海なら大丈夫だよなんて言わない、誰だって辛いことは必ずあるから…。僕は相談にのることしか出来ないけど、いつでも頼ってね…?」
「ありがとう、愁…」
そして私達は、笑いあったり、慰め合ったりとこの夜を過ごした。愁から消えた記憶が、2人の仲を引き裂く思い出だった事を知らずにー。