「ねぇ、夏海。僕、まだ夏海に言ってないことがあるんだけど、今話しても大丈夫?」
「うん、ゆっくりでいいから、もっと愁の事教えて?」
彼はふぅ、と深呼吸をして話し始めた。
「僕、今記憶を失っているんだ、3年前事故にあってね。その時の事もほぼ記憶の中から消えてしまっているから、誰が何をしてくれて僕が今この世界に生きていられているか分からない…。でも、その事故の時僕を助けてくれた人がいるんだって、その事を医師に言ったら、この記憶喪失は必ず戻るらしいんだ、しかも近いうちに。もしもその時、また暗闇に押しつぶされそうになっちゃったら、僕を助けてくれる…?」
病気だけじゃなく、記憶まで失ってしまっているだなんて…。また、余命の事を聞いた時くらいに泣きそうになってしまったけど、彼に心配をかけてしまっていたら、一緒にいる意味がないんだ。そう思い、流れてきそうな涙を零さないように、上を向いた。
泣かないために上を向く、でも上を向いたら躓いてしまう。下を向いたら涙が零れてしまう、そんな時、横には彼がいた。彼が、私の笑顔の源なんだ。零れそうになった涙を、拭ってくれる君。上を向いて躓きそうになってしまったら、支えてくれる君。