彼は、一瞬何かを隠すような表情をした。私とは今会ったばかりだから、話してくれると思わないけど、なぜかとても悲しい…。
「そ、そうなんだ…。」
「えっと、君の名前は?」
「私は一ノ瀬夏海、あなたは?」
「僕は如月愁、改めてよろしくね」
そして彼は、目を細めて笑った。彼の笑顔はとても美しかった、どんな嫌な事が起こっても、彼と居れば全ての感情が消え去るような。
「隣、座ってもいいかな…?」
私はもっと彼と仲良くなりたい、彼を知りたい、そう思っていた。
「うん、いいよ」
「あなたは」
「愁でいいよ、愁って呼んで?」
「わ、わかった。愁は、いつもここにいるの?」
「うん、ここで本を読んだり、写真を撮ったりするのが好きなんだ」
「本が好きなの?」
「本は、凄い好き…。本ってさ、言葉だけなのに、凄い説得力があるっていうか、心打たれるっていうか、なんて言うんだろう…、とにかく、自分が辛い時、寂しい時、勇気づけてくれる言葉にも出逢える。自分だけの世界だし、違う人の考え方とか色々知れるものだと思うんだ。凄いかっこいい事言っちゃったけど、1番は、本を読んでると現実から逃れられるからなんだけどね」