「その事故は、一ノ瀬のせいじゃないだろ?!一ノ瀬は悪くないんだよっ…幸せになってもいいんだよっ…」
彼は私の肩を掴みながらそう言った。
私のために励ましてくれてるんだよね。でも、本当に私のせいなんだよ…。
彼は何も言わずに俯いている。
「ううん、あれは私のせいなの」
私がそう言うと、驚いたように私と目を合わせ、苦しそうな表情を見せた。私は人に、そういう表情しかさせる事ができない、笑顔にする事ができない。そんな不器用で最低な自分が、一ノ瀬夏海という存在が、大嫌い。
私は彼と目を合わせないように俯きながら、その場を後にした。
教室に戻る途中、梨々花が私を待ち伏せしていたかのように立っていた。
「あんた、なんなの、どうして夏海が柊に告られてんのよっ…！」
え、嘘、見られてたの…？
「どうして、その事…。」
「自販機で飲み物買ってる時、柊の声聞こえて、ちょっと内容聞いてたら一ノ瀬って聞こえたのよ」
「いや、その…」
「どうしてあんたなの？咲良も柊もなんで私より夏海を選ぶの……今までの苦しみ、全部あんたのせいなんだよっ！ふざけんな！…まぁいいわ。明日楽しみに待っといてよね」
彼女はそう言って帰って行こうとしたが、何かを思い出したのか、振り返って私にこう言った。
「そういえば、上履きゴミ箱の中だから〜」
そう言い残し、笑いながら去っていった。
その後、学校全体のゴミ箱を見てみると、彼女の言う通り、「一ノ瀬」と書かれた上履きが捨ててあった。やはり梨々花の仕業か。
最初から薄々気がついてはいたけれど、事実となると少し苦しいな。