儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

私はパレットに絵の具をだし、筆でなぞる。
久しぶりに筆を絵の具につけた感覚は、中学の美術室を思い出させた。
まるで、中学の時に戻ったみたいで。
あの時は、両親を失うなんて思いもしなかった。ただ黙々と絵を描き続け、賞を取れば両親や友達に褒められる。
勉強と部活を両立させていたし、先生からの信頼もあった。
クラスの代表である委員長にも、自らではなく推薦でなった事も。
それが、呆気なく壊されたあの日。
私はあの日の出来事を一時も忘れた事がない。まるで何度も見た映画のように、頭の中では両親の死のフィルムがずっとずっと流れ続けている。
私は1つ息を吐き、自分に集中しろという言葉の呪いをかけた。
いつの間にか夕方になっていた。
窓から入ってきたオレンジの光は、まるでカーテンのようだった。
その光は私の部屋を包み込んだ。
私は、愁と一緒に屋上から見た夕日を思い出した。あの時は、私が彼を支えなきゃと勝手に思っていたけれど、今はもうそんなの必要ないんだなと気付いた。
だって、彼はちゃんと自分で向き合って、笑顔で過ごそうと頑張っていたんだから。